東日本大震災に伴う取材は明確な答えが出せないものが多いと感じる。災害公営住宅の収入超過者に対する家賃上昇もその一つだ。

 公営住宅法の定めで入居は原則、住宅に困窮する低所得者が主な対象。一定以上の収入がある人は段階的に家賃が上昇する仕組みで、大船渡市の村上喜八郎さん(45)も公営住宅からの退去を決めた。

 現状を知ってほしいと取材に応じてくれた村上さん。団地自治会の役員も務めているが、退去後は「サポーター」として側面から支えるという。「阪神大震災の時から指摘された問題。制度が変わるのを待っていたけど…」と苦悩に満ちた言葉が重かった。

 この問題で難しいのがバランス。既に自力再建を決めた人との公平性、公営住宅の入居促進は民業圧迫につながりかねないなど論点はいくつもある。一方、被災者にとって「ついのすみか」の一つとされる災害公営住宅の生の声を聞くと、最適解が他にもあるのではないかとも感じる。

 震災から9年が過ぎた。ネットの震災関連ニュースに「いつまで震災の話をするの?」といったコメントも見掛ける。ただ、災害が多発する日本では同様の問題がどこでも起こりうる。「いつまで-」から「いつかは私も」の視点で議論が深まってほしい。

(長内亮介)