「二戸は災害がない場所だからね」。地域住民からたびたびそんな言葉を聞き、寂しさややり切れなさを感じた。

 災害関連の取材で、沿岸部を訪れることも多かったこの1年。懸命に震災復興へ歩む人や台風禍に苦しむ人の姿があった。一方で、二戸に帰るといつもと変わらない日常が続く。何とも複雑な気持ちだった。

 昨秋取材した軽米町の自営業堀米成嘉(しげよし)さん(63)は、同町などが被害を受けた1999年の県北豪雨の教訓をつないでいる。全壊住宅25棟、床上浸水456棟。「命を守る行動は何か、考えるきっかけにしてほしい」と、映像を使って児童に啓発している。

 「地元の映像には緊張感がある」と、当事者意識の重要性を強調する堀米さん。二戸でも災害はあったし、これからもある。取材を通して改めて思うとともに、伝える側の責任の重さも感じた。

 2年半過ごした二戸を離れることになった。ノートや名刺の整理をするとつい手が止まる。地域の魅力を発信する若者、伝統技術を極める職人、団結して挑戦する母親たち-。すてきな出会いをくれた皆さんに感謝しかない。だからこそ、おせっかいではあるが、日頃の備えを見直してほしい。そしてまたいつか、ともに笑顔で杯を重ねたい。

(下石畑智士)