2020.03.12

のんさんと駆ける聖火の道① 岩手への思い

 
 

 2020年3月。春の息吹が少しずつ感じられるものの、まだ寒さが残る岩手を、女優のんさんが訪れた。「少しずつ復興は進んでいると思います」


 三陸鉄道宮古駅構内を歩きながら話す言葉には、岩手への思いと愛情があふれていた。駅のホームに冷たい風が流れる。少しだけ寒そうなしぐさを見せながら「透き通るような岩手の空気が心地いい。帰ってきたんだなと実感します」と青い空を見上げた。

ドラマ撮影だけで終わらぬ縁

 「岩手は第二の故郷だと思っています」。のんさんは、東日本大震災からの復興への道を一歩ずつ進んでいる岩手を、いつもそう表現する。

 久慈市を舞台にしたNHKの朝ドラで主演を務めた。復興に向かう岩手に勇気と笑顔を与えたドラマは、大ヒット作品に。多くの県民の胸を熱くし、兵庫県出身ながら「岩手県ゆかりの女優」となった。

三陸鉄道宮古駅を訪れたのんさん。県民から「おかえり」と声を掛けられることも多い

 のんさんが岩手県を初めて訪れたのは2012年夏。「東日本大震災のことはニュースで見ていました。あまりの被害の大きさに頭の中が真っ白になったほどです」と当時を振り返る。

 しかし自分の目で直接、被災後の街並みを目の当たりにし「(津波は)こんなにも街を破壊するものなのか」と、さらに強い衝撃を受けた。

ヒロイン役を務めた映画「星屑の町」の上映会で舞台あいさつするのんさん=2月24日、久慈市

 ドラマ終了後も、のんさんは岩手県内の各種イベントや仕事などのため、何度も足を運んできた。「岩手の皆さんを笑顔にしたい。復興へのお手伝いがしたい」との思いを、ずっとつないできた。

 2019年5月にも久慈市などがロケ地となる映画「星屑(ほしくず)の町」(杉山泰一監督)の撮影で、岩手を訪れた。エキストラの住民と触れ合い、のんさんの周りには自然と笑顔が集まった。

撮影の合間に地元のエキストラと触れ合うのんさん=2019年5月23日、久慈市

 東日本大震災から9年。最近は、訪問のたびに少しずつ被災地の復興を実感しているという。「仮設住宅が少なくなってきたと聞いています。皆さんの笑顔を見るとうれしくなります」

"劇中の景色"を走る

 のんさんが今年、また一つ岩手で大きな仕事を担う。岩手を駆ける大役だ。「復興五輪」を掲げる東京五輪・パラリンピックが今夏、開幕する。世界のトップアスリートが躍動する夢舞台。五輪の聖火リレーが岩手でも3日間行われる。

聖火のトーチ

 岩手の沿岸被災地にも五輪聖火が初めてやって来る。岩手県内コース初日の最終区間となるのが久慈市。のんさんが、同市の聖火リレー走者の一人に選ばれた。「台風被害も大きかった久慈を盛り上げるために役割を果たしたい。皆さんに見届けてほしいです」と決意する。

 同市の聖火リレーのコース上には、ドラマで「北三陸市観光協会」が入る施設として映し出され、一躍脚光を浴びた協同組合駅前ビルがある。「駅前デパート」として、1964年の東京五輪が開催された翌年1965年に開店した。40年以上前に建てられ老朽化が著しく、市は一時、久慈駅前にイベント広場を整備し、駅前ビルなどを撤去する方針を決めていた。

「あまちゃん」で脚光を浴びた駅前ビル=2013年11月22日

 しかし、ビル所有者との交渉が難航。現在も同ビルは「北三陸鉄道」と書かれた看板が飾られるなど、ドラマ終了後もシンボル的施設の一つとして名残をとどめている。

「秋のさんてつ祭り」ではドラマで大吉役を務めた杉本哲太さん(右)が餅まきし、多くのファンでにぎわった=2013年11月3日、久慈市・三陸鉄道北リアス線車両基地

 一方、駅周辺は再開発が進んでいる。駅の南側には、複合施設・情報交流センター(愛称・YOMUNOSU=ヨムノス)が建設中だ。

久慈駅(左)の南隣に建設が進む複合施設=2019年12月9日

 東日本大震災と相次ぐ台風被害から、復興が進む久慈市。玄関口に立つ新旧の「顔」を眺めながら、のんさんら聖火ランナーが駆け抜ける。

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 この記事は、岩手日報社が「LINE NEWS」編集部と共同で企画、構成しました。記事全文は「LINE NEWS」でもご覧いただけます。