盛岡市を舞台にしたホームスパンと家族の物語「雲を紡ぐ」が刊行された。手仕事の織物に親子3代の心模様を重ね、その再生を描く。同市の美しい四季や憩いの場も惜しみなく盛り込んだ「盛岡愛」あふれる一作。作者の伊吹有喜さん(東京都)は「祖父から孫まで着られる『時を超える布』ホームスパンに引かれた。地元の方に愛してもらえる作品になればうれしい」と語る。

(学芸部・佐藤瑛子)

 いじめに遭い不登校になった東京の高校生美緒は、岩手でホームスパン工房を営む父方の祖父母から贈られた赤いショールが唯一のより所。しかし母にショールを取り上げられ、衝動的に祖父紘治郎の元へ逃げ込む。祖父たちの仕事に心引かれた美緒は工房に入門し、生きる力を取り戻していく。

 住民にとっては地元の良さを改めて確認でき、県外の読者には盛岡の魅力を生き生きと伝える本作。「読んだ人が盛岡ってどんなところなんだろうと遊びにきてくださったら最高。本を中心に世界が広がるというのは、小説を書くものにとってこんなにうれしいことはない」と笑みを広げる。「雲を紡ぐ」は文芸春秋刊、1925円。

「雲を紡ぐ」