宮古市田老の津波遺構たろう観光ホテルに新しくエレベーターが設置された。もしも、この朗報がカナダ・トロント市の元教員ウィリアム・ペティパさんにも届いていたらうれしい。

 彼と会ったのは同市に大型客船ダイヤモンド・プリンセスが初めて寄港した昨年4月。同客船の被災地見学ツアーに参加する外国人を取材するため現地に行くと、1階駐車場で一人たたずむペティパさんがいた。

 なぜみんなと6階の津波映像を見に行かないのか、片言英語でたずねた。80代のペティパさんは「膝が悪くてね。諦めるよ」と残念そうに非常階段を見上げた。せっかく被災地に心を寄せてくれたのに、申し訳ない気持ちになった。

 年が明け、完成したエレベーターを取材した。階段で上がると、日頃の運動不足もあり息が上がる。学ぶ防災ガイドの佐々木純子さん(57)は「階段を使うと(津波の到達した)高さを体感できる側面もある」と話し、基本的にはエレベーターではなく階段を使っていくという。

 風化を防ぐ意味で、体が不自由な人や高齢者が施設を利用できるようになった意義は大きく、とても喜ばしい。一方で、もし津波が襲ってきたとき自らの足で高い場所へ逃げられるよう備える。その大切さもエレベーターから再認識させられた。

(工藤 光)