「入浴着の着用を認めてもらえませんか」。東京都町田市の主婦、松下澄子さん(60)から、温泉や銭湯で乳がんの手術痕を見せたくない友人の気持ちを代弁する投稿が東京新聞に載りました。同紙の特命取材班が調べてみると、国は着用を認めていますが、周知が進んでいない実情も見えてきました。

 公衆浴場の衛生面を管轄する厚生労働省の担当者は「乳がん手術や皮膚移植などの傷痕を覆う衛生的な入浴着ならば利用を認めています」。ホームページやツイッターでも周知しているものの、あくまでお願いベースです。

 入浴着の素材や形状に決まりはありません。女性のがん患者向けに衣料品などを通信販売するブライトアイズ(東京都練馬区)が扱う入浴着(税別3800円)は、撥水(はっすい)性を重視してナイロンとポリウレタン製。片側だけに肩ひもが付いた丈の短い、背中が大きく開いたキャミソールのような形をしています。

 日帰り温泉施設「前野原温泉 さやの湯処」(東京都板橋区)では6年ほど前から入浴着の利用を認めています。「傷痕で周囲の人を驚かせたくない」との利用客から届いたメールがきっかけでした。女性用脱衣室に入浴着を周知するポスターを掲示し、利用客の理解も進んでいるそうです。

 一方、全国のスーパー銭湯や日帰り温泉施設計187軒が加盟する「温浴振興協会」(横浜市中区)の諸星敏博代表理事(67)は「施設では入浴着による利用客同士のトラブルを避けたがる傾向にあります」と、積極的な周知を控える施設があることを明かします。

 (東京新聞提供)