老舗中華そば店、高権(たかごん)がファンに惜しまれながら閉店した。「権さん」と地域に親しまれ花巻が全国に誇る名店だった。

 高権麺(通称ごんめん)は卵でとじたあんかけスープが体に染み渡り、心が満たされた。寒くなるこれからの時季に恋しくなる味わいだった。冷めぬ高権愛。いつまでも熱々のスープのように。

 ごんめんの生みの親は先代の高橋邦夫さん。2018年6月8日に逝去する前日に「友達にも、ご近所にも、お客さんにも恵まれた」と口にしたそうだ。

 11月30日の閉店日。店内は常連が寄せた花や手紙であふれ、客と従業員がねぎらいと感謝の言葉を交わした。長女の木戸口芳江さん(56)は「お客さんに恵まれたという父の言葉の意味を改めて実感した」と感慨に浸った。

 常連客の権さんとの思い出は人それぞれ。ごんめんを食べた途端に陣痛が始まったという常連の奥さん。普段は食が細いけど、ごんめんは完食できるのよ、とほほ笑む老婦人-。

 「店が混んでいるとき、いつでも食べられる常連さんはいちげんさんに自主的に席を譲った」という逸話も伺った。あうんの呼吸-。客と店が長年培った家族のような関係。最後に温かい話も聞けて胸もいっぱいになった。

(新沼雅和)