「いかにも海らしい名前だね」。大船渡支局に着任してから、名刺を渡すと、「航矢」という名前を見てよく言われる。しかし、生まれてこの方、内陸育ちの私は漁業の取材では右も左も分からず、冷や汗ばかりかいている。

 それでも、現場の取材は楽しい。特に連載企画「舫い」は普段の作業を見せてもらえる貴重な機会で、行動や言葉から強い思いが感じられる。

 大船渡市でホタテ養殖を行う千田正之さん(62)、悦子さん(57)夫妻は稚貝を丁寧に扱い、「私たちが作ったと分からなくても、食べて笑顔になってくれればそれで良い」と品質にこだわる姿に胸が熱くなった。一方で漁業者の多くは50代以上。後継者不足も肌で感じた。

 「胸を張って生産している姿を見せて、昔のようなにぎやかな漁港にしたい」。三陸国際ガストロノミー会議2020で、陸前高田市でカキ養殖・販売を行う佐々木学さん(37)が語った言葉が心に響く。浜の活気とともに、これからどう後継者を増やしていくか、思いのこもった取り組みに注目したい。

 取材を通して、漁業を応援する気持ちが高まり、三陸産のものを選んで買うようになった。4月から増加した体重は応援のたまものだと言い聞かせている。

(清川航矢)