リレーエッセイ イワテライフの楽しみ方

大建ももこさん第1回(全2回)

 
初夏の近隣の景色

 4月中頃にツバメの家族が帰ってきて、美しい桜が新しい出会いなどさまざまな「春」を祝う。やがてカッコウが鳴いて、田植えと大好きなアカシアの香りに包まれる初夏。こぼれ落ちてきそうな星空と蛍の夜の短い夏は、館内をさまよう飛行訓練中のツバメ、続いてオニヤンマ・ギンヤンマの救出に大忙し。収穫作業で疲れ顔の農家さんが日帰り温泉に多く訪れる実りの秋。大根を干して漬物を作る下準備が始まり、薪をストーブにくべて湯たんぽを用意する。冬の寒さが厳しくなるほどに感じるのは、郷土料理のひっつみと温泉とここに住む人たちのあたたかさ。山々にぐるりと囲まれた金田一温泉の一年の暮らしは、このように自然とともに、小さな幸せに包まれながらゆっくりと繰り返していく。

 青森県の十和田生まれ八戸育ちの私がこの街にお嫁に来たのは、東日本大震災の年の秋。時計のスピードがゆっくりと丁寧で、それは、ここで暮らす人も、私が嫁いだ旅館も同じだと知った。そのせいだろうか、都会から訪れる常連客からは、「接客も田舎っぽいほど心に染みる」と言われることが多い。

 一年ずつこの自然とともに年を重ねて、「きれいだな」「素敵だな」と感じる時間を増やしていくことが、私たち夫婦の楽しみだ。

今月の人 大建ももこさん
9年ほど前に二戸市金田一温泉にある「おぼない旅館」に嫁ぎ、子育てをしながら、若女将として家族とともに旅館を切り盛りしている。また、「大好きな金田一温泉地区をたくさんの人に好きになってもらいたい」とさまざまな活動にも取り組む。