秋晴れが広がる10月下旬の週末。北上市の国見山トレイルコースを1人で歩いていた私は、約15メートル先に大きな黒い塊を見つけて立ち止まった。「でっかいハチの巣だなあ」。そう思った直後、塊が動きだした-。

 その日はトレイル体験会を取材していた。参加者に同行し、深まる秋を満喫。別の取材があったため一行とは途中で別れ、来た道を引き返した。

 数十分後。曲がり道を過ぎた所で、動く黒い塊に遭遇した。「クマだ…」。背筋が凍り付き、足がすくんだ。カメラを取り出す余裕もなく、一本道を必死で後ずさりした。クマはこちらを見向きもせず、落ち葉をあさり続けた。直後にトレイル中の中学生とその父親に合流。2人は大声を響かせて追い払ってくれたが、震えが止まらなかった。

 県内各地でクマ被害が相次いだ1年だった。同市での目撃件数は、ここ15年で最多の約250件に上り、人身被害も発生した。

 街と自然がコンパクトに集約された同市は、気軽にアウトドアに親しめる環境にあるが、自然とうまく共存するためには、何より備えが重要だ。

 私の最大の反省点は、クマよけ鈴を持たずに入山したこと。自然の中に飛び込む取材は多いが、備えを徹底して臨むためにも、この経験は忘れない。

(斉藤元)