2020.12.24

当事者として支える

高次脳機能障害のピアサポーター養成講座で発表する阿部類さん(左)。当事者の立場から支援活動に力を注ぐ=盛岡市・県自治会館
高次脳機能障害のピアサポーター養成講座で発表する阿部類さん(左)。当事者の立場から支援活動に力を注ぐ=盛岡市・県自治会館

高次脳機能障害

阿部 類あべ・るいさん(35)=児童指導員、盛岡市三本柳

 

④ピアサポーター

 阿部類さんは高次脳機能障害(高次脳)の「ピアサポーター」の顔を持つ。障害児の放課後等デイサービスで指導員として働きながら、盛岡市のNPO法人いわて高次脳機能障害友の会イーハトーヴ(堀間幸子代表)が月1回(8月~来年2月予定)、週末に開く交流会に出席。同じ当事者の立場から、参加者の悩みや不安に寄り添っている。

 今でこそ当事者のリーダー的立場の阿部さん。ただ以前は違っていた。

 脳出血で10年前に高次脳を発症した。リハビリで周囲も驚く回復を遂げた。同じ高次脳でも雰囲気や会話からすぐに障害があると分かる人たちを見て、感じていた。「俺とは違う」

 交流に意義を見いだせなかった。障害者扱いされれば「甘えて、回復に良くない」とも思っていた。

 盛岡市内の農業団体で働いていた3年ほど前。堀間さんに盛岡市内に住む一人の女性(54)を紹介された。

 交流会で会った。「印象はきれいで知性的。でも話せば話すほど自分と似たような問題を抱えていた」

 脳腫瘍から高次脳となった女性。事務員として働いているが「一つのことをしているうちに、次にすることが頭から消えてなくなる。最近は字も書けなくなってきている」。取材の質問を聞き返したり、話が長くなると「私、何を言ってたんでしたっけ」。短いやりとりからだけでも、思うに任せない心情が推察できる。

 阿部さんは女性との出会いを機に、改めて交流会に足を向けるようになった。失語を抱えながら障害者手帳の基準に合わず福祉制度の枠外に置かれる人、話好きなのに言葉が思うように出なくなりストレスを感じている人-。自分のように人知れず苦しむ高次脳当事者の存在を知った。

 学生時代、福祉の専門家を育てる大学教員を目指していた。「交流会には感情を抑えられないなど自分が昔悩んでいたような課題を持つ人が集まってくる。病気で目標への流れはつくれなかったけれど、経験を生かして他の誰かを支えるピアサポーターは一番気軽にアクセスできる自己実現」

 そして、こう続ける。「交流を通じて自分の心が安定する。友達、家族を含め病気を理解している人たちと付き合っていけたら、とりあえずいいかな」

 障害の特性から、突発的な出来事への対応は苦手。規則通りに流れる日常、気兼ねしない人間関係を望む。それは障害者になり、もだえながら行き着いた自分らしく生きられる方法に他ならない。

 母親の徳乃さん(60)。阿部さんにとって自慢の母であると同時に、失ったものの大きさを振り返り、複雑な感情が交差する存在でもある。

 実家を出て、市内のアパートで1人暮らしをする息子に、徳乃さんは「親とすれば責められどころはたくさんある。類には苦しい時間を必死で過ごしてきた分、穏やかで充実した人生を送ってほしい」と願う。

 職場では、記憶力の問題など高次脳を自覚する。原因となった難病「もやもや病」による脳出血で右半身は違和感が残る。病気、障害と向き合い、当事者を応援しながら、これからチャレンジしたいことがある。

 「高次脳が理解されず苦しかったのは、それが十分に発信されてこなかったからだと思う。悩む当事者や家族が少しでも減るように経験を広く外に向けて伝えたい」。障害を負った意味が今、はっきりと分かる。

(阿部類さんの回は終わり)

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