イベントや祭りの活気が遠のいた1年の中でも、新たに芽吹いた催しがあった。宮古市の鍬ケ崎地区で11月から定期開催されることになった鍬ケ崎元気市は、東日本大震災で被害を受けた町に、にぎわいを取り戻そうと地元ゆかりの店がテントを連ねる。

 取材で店を物色していると「あめっこ煎餅」なる商品に目が留まった。「復活」の売り文句に興味を引かれ、手に取った。

 ごまをちりばめたおなじみの南部せんべい2枚の間に水あめがこってりと詰まっている。ごまの香りが甘みを引き立て、20代の私には新鮮な味わいだった。

 あめっこ煎餅はかつて、神社の祭りや初詣の屋台で定番商品だったという。販売するかけあしの会の香木みき子さん(54)から「今では見掛けない懐かしい食べ物。この市で食べられる名物にしたい」と思いを聞いた。「おばあちゃんが喜ぶ」と20個以上買っていく人もいたという。

 市では引っ越した住民同士の再会も見られた。互いにマスクを着けていても、目を輝かせ、旧交を温めていた姿が印象に残る。

 震災から10年を迎える来年はこれまでを振り返る機会が増える。多くの人にとって懐かしい味とともに、被災前のつながりを取り戻そうとする試みが、心の支えになると実感した。

(佐藤渉)