1年前のこの時期、どこか落ち着かない日々を過ごしていた。今年2月にあった奥州市民☆文士劇への参加を控えていたからだ。

 初めての舞台。2008年にスタートした文士劇に出演した支局員がいたことは知っていたが、まさか自分が参加するとは思わなかった。学生時代もステージに立った記憶はない。

 本格的な時代劇の衣装を着て、初めて化粧もした。稽古期間中、ベテラン出演者から「ここに至るまでの役柄の歩みを考えていますか」と問われ頭を抱えたが、終わってみれば良い思い出。恥ずかしさを上回る達成感があった。

 それから半年が経過した9月。奥州市江刺で開かれたイベントの一角で、不意に声を掛けられた。振り返ると、音響などを担当した岩谷堂高演劇部の女子生徒が学校活動の一環で商品を販売していた。「来年はキャストに挑戦する」という力強い言葉。舞台裏を支えていたスタッフの熱意を思い出した。

 新型コロナウイルス感染症の予防のため、人との距離が求められる中、つながりの大切さも教えられた一年だった。総勢約150人が力を合わせた市民文士劇という「宝物」に触れられたことに感謝。幅広い世代と出会い、地域への思いを聞いた経験を生かし、より深い取材を心掛けたい。

(佐藤俊男)