気仙地区は「野球どころ」だ。取材相手と話題になると、自然と会話が盛り上がる。今年は東日本大震災で被災した高田松原運動公園の復旧もあり、野球に関する取材が多かった。

 「きみたちは甲子園に一イニングの貸しがある」。1988年夏の甲子園、八回降雨コールドゲームで涙をのんだ初陣の高田高ナインに寄せた故・阿久悠さんの詩が好きだ。

 今夏、震災の大津波に耐えた甲子園出場記念碑が同校にかえってきた。取材の合間に、碑に刻まれた阿久さんの詩を黙読した。選手たちの無念、やるせなさが伝わってくる。

 記念碑や運動公園オープンの取材でかつての選手や関係者に話を伺った。「『一イニングの貸し』はまだ返してもらっていない」「必ずもう一回行かなければならない場所だ」。32年たっても変わらぬ思い。後輩たちに託す願い。言葉の端々に胸が熱くなった。

 今夏の県大会で同校野球部は久々にベスト4に進出した。準決勝では優勝した一関学院高と互角に渡り合い、地元を盛り上げてくれた。

 選手たちの奮闘は震災からの復興へと歩む市民にとっても大きな励みとなるはずだ。支局在勤中に、2度目の甲子園出場をこの目で見たいと強く願っている。

(向川原成美)