内陸にいても被災地に寄り添い続ける思いは変わらない。北上地域を回って感じたのは、災害支援に関わるこの地の企業や団体も同じ気持ちで東日本大震災に向き合ってきたことだ。

 10月、長期の避難生活に対応した移動型住宅コンテナを開発した北上市のガス会社、北良(ほくりょう)(笠井健社長)を取材した。水、電気、ガスなど全インフラを自給できる「夢の箱」。実証試験に家族と参加した8歳の少女は人工呼吸器を常時装着している医療的ケア児だった。初めて泊まる場所でも安心したように眠る彼女を前に、震災当時の記憶がよみがえり、カメラを持つ手に汗がにじんだ。

 振り返ると、発災直後から陸前高田市入りし、がれきに覆われたまちを連日取材した。インフラが寸断された地域で会った女性は持病を抱え、長引く避難所生活に生きる気力さえそがれていた。だがその後、仮設住宅が完成し、安心して過ごせる空間を得た彼女の表情は安堵(あんど)に満ちていた。

 全国の災害現場に駆け付けては自社の支援機器を供給する。そこで見つけた課題は持ち帰り、改善する。こうして北良が蓄積した結晶が移動できる住宅コンテナだった。

 記者としてこの10年で何を学び、何を蓄積できているか。そう自問し、2021年は北上地域と被災地の「いま」を見つめていきたい。

(稲垣大助)