スマホで分別手助け

弘前市が設置している衣類回収ボックス。設置場所は市環境課職員(右)が手にしている地図のほか、ごみ収集アプリでも調べられる=10月8日、同市役所

 青森県は1人1日当たりのごみ排出量が全国で3番目に多く、ごみのリサイクル率は全国最下位(共に2014年度)-。16年、八戸市のIT企業「アイティコワーク」取締役の岡本信也さん(42)は、身近な環境を特集した県広報誌の記事に衝撃を受けた。これをきっかけに、家庭のごみ出しをスマートフォンで手助けする「ごみ収集アプリ」を開発。同県内で採用する自治体が徐々に広まっている。

 同社はアプリ開発に当たり、一般廃棄物処理を担当する県内全市町村にアンケートを実施。課題に浮かび上がったのは、分類ミスや住民からの問い合わせの多さなど、分別のマナー向上と啓発だった。

 一方、住民側の悩みを社員同士で話し合った。「燃えるごみを出す曜日は覚えているが、収集日が月1回程度の燃えないごみや段ボールは出し忘れることが多い。次回まで1カ月待つのはストレスにもなる」

 これらの声を基に完成したアプリは、収集日の前日と当日の2回、集めるごみの種類をスマホの画面に通知。分別に悩んだ際に品目を入力すると分類や出し方を説明する検索機能も備えた。アプリを導入した県内の自治体は、八戸市を皮切りに弘前市、むつ市、青森市、十和田市、平川市と拡大している。

 このうち弘前市のアプリには、古紙や衣類を回収する場所を検索できる機能も加えている。廃棄物ではなく資源物としてリサイクルすることで、市内のごみ排出量を減らそうという市の要望に応えた。

ごみ収集アプリを紹介するアイティコワークの岡本信也さん=9月28日、八戸市

 ごみ収集アプリの目的は住民の利便性向上や自治体の負担軽減だが、岡本さんは「青森県のごみ排出量やリサイクル率が他県より劣っている問題を少しでも解決できるよう、住民にごみへの関心を持ってもらうことも狙い」と強調する。

 行政が保有する公共情報を誰もが利用できる形で公開する「オープンデータ」を活用しているのも、アプリの特長の一つだ。収集日や分類方法などの自治体のオープンデータを市民に還元する流れをつくることができた-。岡本さんはそう自負している。

 アイティコワークは社長の触沢篤司さん(47)と岡本さんが12年に設立した。業務システムやスマホアプリの開発を主力としながら、ITを使った地域の課題克服にも積極的に取り組んでいる。その第1弾が産直施設専用のレジシステム「アグリレジ」。現場の悩みをヒントに、ラベル出力から売り上げ管理まで産直施設の業務を支援し、出荷する農家が容易に在庫を把握できるようにした。

 「ITで地域の課題が解決できそうな分野には何でも挑戦したい」。岡本さんは意欲を見せている。

(東奥日報社)

 

期待の声
 

排出量減らす効果も

福士智広さん

 アイティコワークのごみ収集アプリを導入している自治体のうち、同社が「最も積極的に活用している」というのが弘前市だ。同市環境課長の福士智広さん(49)は「若い人は誰もが常にスマホを携帯している時代。アプリを活用しない手はない」と言う。

 学都・弘前市は1人暮らしの大学生の割合が多いこともあり、ごみの正しい分別と減量化は長年の課題だ。同市はごみの出し方のガイドブックを配布するとともに、アプリの活用をPR。スーパーなどが設置している資源ごみの回収拠点を地図上に表示する機能や、不用品の出品者と希望者を仲介する掲示板もアプリに盛り込んでいる。

 市の人口約17万人に対し、アプリのダウンロードは約9千件(今年6月末現在)。ここ1、2年は同市のごみ排出量が減少し、アプリ効果の可能性もあるという。福士さんは「アプリを入れている市民はごみ問題への意識が高い。アプリの普及は減量につながるはず」と期待を寄せる。

 

リテラシーが高まる

大浦雅勝さん

 青森県内のIT企業経営者らでつくるNPO法人「あおもりIT活用サポートセンター」理事長の大浦雅勝さん(48)=弘前市=は、「インターネットやスマホの利用率が全国下位にある青森県で、暮らしに密着したアプリが市民に普及していることは素晴らしい」と評価する。

 ごみ収集アプリは、必要な情報をスマホ画面に自動的に知らせる「プッシュ通知」を活用。一度住所を登録すれば、紙の収集カレンダーや自治体ホームページに頼る必要がない。印刷物よりスマホが身近な大学生も気軽にアプリを入れて利用しているのでは-と大浦さんは推測する。

 同法人は県民のITリテラシー(理解・活用能力)の向上を目的に活動し、アイティコワークの岡本信也さんもメンバーの一人だ。大浦さんは「ICT(情報通信技術)は特定の職業や人だけのものではない。誰もが必要なごみ出しにスマホを使うようになれば、県民のITリテラシーが高まるだろう」と話した。