新型コロナウイルス感染症の影響で「禍」の文字を多く見かける日々が続く。「史記」に「禍福はあざなえる縄のごとし」とある通り、いつか吉報を記事にできると信じていたが、今秋のマツタケの豊作は思いがけない「福」だった。

 全国有数の産地である本県沿岸からも大量のマツタケが県内外に行き渡った。販売する山田町船越の道の駅やまだ副支配人の豊間根仁さん(49)が「贈答用の箱の方が多く売れる」と驚くほどだった。

 取材先の方からもお裾分けをいただき、行きつけの酒場で網焼きとおでんの具材にしてもらった。人生初のマツタケは上品で不思議な香りで、もっきりを一瞬で空けてしまった。

 しかし、マツタケ採りに関連する遭難事故も続発した。岩泉町で消防団らの捜索に同行した際は道を見失い、やぶの中をさまよった。携帯電話の地図機能に助けられ下山できたが、山の怖さも味わった。

 豊作で採取量が増えると、急斜面を歩く時の足腰への負担が増して遭難の危険も高まる。禍と福の表裏一体を実感した。

 作柄から「10年前を思い出す」との声も多く聞いた。東日本大震災前年の2010年もマツタケが豊作だったため、災害の前触れではと一抹の不安をもたらしている。新たな禍など来ないと信じながらも、まずは世界を覆う疫病禍の退散を願いたい。

 (佐藤渉)