新型コロナウイルス感染症は人々の交流に影響を与えているが、直接会ってこそ伝えられる思いがあると再認識した取材がある。

 福島県南相馬市の女声合唱団MJCアンサンブル(金子洋一代表)が8月、大船渡市を訪問した。東日本大震災後に誕生した合唱曲「群青」の発祥地は南相馬。この曲を代々歌い継ぐ大船渡中の存在を知り、交流を予定していた。

 合唱活動を介して感染が広がる「合唱クラスター」という言葉が世間をにぎわせていた当時。MJCは心配をかけまいと、活動紹介DVDを置いて学校を後にしようとしていた。しかし、同校生徒会は直接礼を言いたいと有志を募り、36人もの生徒が出迎えた。

 学校の中庭に集まった一行。金子代表(66)が静かに語り掛ける。メンバーが津波で犠牲になったこと、心の回復を待ち群青を歌えるまでに1年を要したこと。歌の意味だけではなく、自分たちが歌う意味を伝えると、生徒はまっすぐな目で受け止めた。

 東京電力福島第1原発事故による避難で全国に離れ離れとなった友達と、同じ空でつながっていると伝える群青。その空の下には大船渡中の仲間たちもいる。互いに向かい合い歌声を響かせた生徒たち。今はまだ、体の距離は取りながらだけど心は一つになったはずだ。

(長内亮介)