広がる「新トレ」の輪

 岩手日報社のNIB講座「新トレ(新聞トレーニング)」は、本格スタートの昨春から9企業・団体、大学、専門学校で24講座が展開された。新聞を使った情報収集、コミュニケーション、簡潔な文章の書き方など、新聞社が総合力で行う講座が評価され、昨年末から新たに1企業が内定者研修に取り入れたほか、年明けに2講座が始まる。受講者を替え2回目の講座を開く動きも出ている。


1カ月間読んだ新聞から記事を選びグループで紹介する盛岡友愛病院リハビリテーション科のスタッフ。文章を要約し、プレゼンテーションする力を身に付けている

 盛岡友愛病院(佐々木達哉院長)リハビリテーション科は昨年11月、春に続き2回目の新トレを始めた。受講者は1回目とは異なる20~30代の理学療法士と作業療法士12人。会話の話題を増やす効率的な情報収集法や、報告書や論文などに生かせる簡潔な文章の書き方がテーマだ。

 若手職員の教育担当を務める理学療法士の本城洋志さん(35)は「前回の受講者は患者とのコミュニケーションが増え、報告書もしっかりしてきた。新聞講座の成果だ」と新トレ再導入の理由を説明。

 本城さんとともに指導に当たる鈴木麻美さん(34)は「新聞を読むようになった若いスタッフは語彙(ごい)力がついている」とした上で、12月26日に開かれた読解力と文章力を高める講座・ワークショップについて「記事からキーワードを探し要約する訓練は、論文を読むときにも、報告書を書くときにも役に立つ」と振り返る。

 他の企業・団体の受講者も講座の効果を実感。東北電力の若手社員は「新聞は、読みやすく情報が記憶に残りやすい媒体と感じた」「簡潔に分かりやすくまとめる書き方を学んだ。報告書に生かせる」と感想。教師を目指す盛岡大の学生は「さまざまな見方、考え方を新聞で読み見識が深まった」「教科書に合わせ身近な記事を使った授業を行いたい」と将来を見据えた。遠野市の公民館主事は「広報の充実に役立つ」とし、盛岡情報ビジネス専門学校の学生は「情報が多く就職活動に生かせる」と新聞の構成や情報量を再認識していた。

 陸上自衛隊岩手駐屯地の横田紀子司令は「新聞はコミュニケーションを取る上で重要なツール」と強調。上野法律ビジネス専門学校教員の工藤正剛さんは「新トレは考える力、発想力を身に付けるきっかけになる」と評価するなど、新トレ活用企業・団体から評価の声が届いている。

会話力、表現力が向上 盛岡友愛病院 

要約の演習に取り組むスタッフ

 リハビリテーション科が昨年2、3月、人材育成プログラムで実施。学会発表のスキルや患者とのコミュニケーション充実を目指し、20代の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士10人が受講した。新聞の速読法、記事の要約による読解力、表現力の向上、学会発表に必要なレイアウト術、新聞作りに取り組んだ。受講者は「患者さんとの会話で話題が増え、要点をまとめて話す力がついた」と効果を実感する。

 

紙面広げ近づく社会 盛岡情報ビジネス専門学校 

記事を基に意見文を書く学生

 「新聞を読んで社会に近づく」をテーマに昨年4月スタート。来月まで計8回、情報ビジネス科と会計ビジネス科の38人が情報収集力や読解力、文章力を新聞記事を通じて育む。効率的な新聞の読み方、まわし読み新聞、論説・社説の読み比べ、記事を題材にした意見文の投稿、1面コラムの要約など多彩な演習を展開。メディアリテラシーについての講義も行われ、受講生は社会への関心を高めている。

 

NIEの素養高める 盛岡大学 

講師の話に真剣に耳を傾ける学生

 中学校社会の教員を目指す学生25人が挑戦。昨年5~7月の毎週1回、講義冒頭10~15分間で新聞を隅々まで読み、記事を選び討論、スクラップする活動を行った。教育に新聞を活用するNIEの担当記者が「メディアリテラシーと新聞」「県内NIE事情」と題し講演。NIEの取り組みや手法を紹介した。最終回は「授業の構想」。学生は地理、歴史、公民の分野で、記事を活用した授業を提案した。

 

新聞制作の工程見学 岩手銀行 

新聞の印刷現場を見学する新入行員

 新入行員42人が昨年4月、岩手日報制作センターを見学。「顧客との距離を縮める」をテーマに新聞の活用法を探った。制作センター見学で、輪転機が新聞を刷る現場や新聞制作の工程を本社社員が説明。新聞活用法の講義では、短時間で効率的に情報をつかむ速読法や記事を生かしたコミュニケーションの取り方、地域情報が充実した岩手日報の特徴を記者が解説した。

 

新聞から地域貢献策 東北電力 

記事から地域貢献策を考える参加者

 盛岡市内の事業所が、若手社員の人材育成の一環で昨年6、7月に導入。地元密着型企業の一員として、社会貢献に向けて身近な地域ニュースや課題に理解を深めた。立正大の徳山喜雄教授が「人と人をつなぐ地方のニュース」と題し、地域で働く上で地方紙を読む重要性について講演。記事を参考にした文章の書き方や新聞から地域貢献策のヒントを得て実現の方法を考えるワークショップを展開した。

 

「古里づくり」新展開 遠野市教育委員会 

紙面を広げ写真について話し合う参加者

 公民館主事、地区センター地域活動専門員らの研修として昨年7、8月、「新聞を社会教育に、地域づくりに」をテーマに開催。地域づくりに向けた情報収集や広報の充実を図った。地元支局長と本社社員が、記者の心をつかむニュースリリースの書き方や読者を引きつける写真の撮影方法、新聞広告などを解説。受講者は、新聞で他地域の活動を学び、古里活性化に向け発信する新たな展開を見いだした。

 

情報力育むツールに 陸上自衛隊岩手駐屯地 

読み方のこつを覚え速読に挑戦する隊員

 任期満了退職予定隊員の研修として昨年10月に実施。20代、30代の32人が民間企業などへの就職を前に情報収集・分析力、会話力、文章力を高めた。講座は「新聞は社会人の教科書」をテーマに▽効率的な新聞の読み方▽記事を会話に生かす手法▽記事の書き方を生かした分かりやすい文章-の3本柱。隊員はワークショップなどを通じ、新聞には多種多様な情報が掲載され、仕事や生活に役立つツールと実感した。

 

講座と授業、2本立て 上野法律ビジネス専門学校 

記事を切り抜き、感想を発表する学生

 総合ビジネス学科1年の授業で昨年10月にスタート。毎月1回のペースで本社社員が新聞講座を開くほか、毎週1回、新聞を活用した授業を展開している。これまで、短時間で多くのニュースに接する方法や効果的な写真撮影法の講座を開催。毎週の授業では、記事の要約を定期的に行い、就職活動に役立つ情報収集力と文章力、表現力の向上を図っている。

 

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