岩手、宮城両県の北上山地(北上高地)が建設候補地とされる国際リニアコライダー(ILC)計画は2020年、重要な局面を迎える。誘致の可否を検討中の日本政府が重要視している日本学術会議のマスタープランの公表は今月末、欧州の次期素粒子物理戦略の策定は5月となる想定。政官界では、米国が駐日大使にトランプ政権への影響力を持つILC推進派のシンクタンク所長が内定するなど、国内外で情勢が大きく動く可能性もあり、誘致関係者は追い込みを強める。

 昨年12月27日、東京都内。映画監督の押井守さん、アニメ監督の小林治さん、小説家・編集者の山下卓さんらが集い「子どもたちが科学に憧れるシンボルに」などと訴えた。「ILCサポーターズ」のイベントで、新年に向け各界有志が実現の機運醸成を図った。

 日本政府は同3月、東京で開かれた国際将来加速器委員会(ICFA)の会合で、ILCについて「現時点で誘致表明には至らない」とする一方「関心がある」との見解を初めて表明。検討作業が本格化している。

 判断の過程で重きを置くマスタープランは、学術会議が科学的意義が高いと認める研究事業を掲載する。誘致関係者によると、重点計画として多数の応募から最終的に20件程度を選ぶが、現時点でそのヒアリング対象約60件には入り、何らかの形では記載されるもようだ。

 もう一つの欧州素粒子物理戦略(20~24年)を巡ってはドイツで今月20日にも、草稿会議が始まる。その後、欧州合同原子核研究所(CERN、スイス)の理事会を経て5月に欧州連合(EU)の閣僚に提出される予定で、ILCの位置づけが焦点となる。

 実現のハードルとなっているのは1兆円超とされる初期建設費や、年間の運営費だ。日本政府は先端加速器のコストを低減する共同研究を米国のほか、20年度には独仏とも始める予定。国際分担に向けた政府間の協議進展も不可欠となる。

 こうした重要な時期にあって、米国は駐日大使にハドソン研究所のワインスタイン所長を内定した。トランプ政権に影響力のあるシンクタンクで、ILC推進の立場から日米の国会議員らの橋渡し役も務めてきた経緯もあり、動向が注目される。

 国内外で幅広く建設の意義が評価されれば、最後は国益を踏まえた政治判断へ移る。超党派国会議員連盟の副会長を務める鈴木俊一自民党総務会長(衆院岩手2区)は「米国が一つの鍵を握る中で、新大使の存在は大きい」と受け止め「勝負の年。今まで蓄積してきた取り組みや働き掛けをさらに綿密に展開する」との決意で臨む。