記事や写真、学び深く

 

 本年度、県教委が創設した「NIE推進アドバイザーによる『新聞活用』出前授業」が昨年9~12月、県内6校で行われた。小中学校の国語、社会、特別活動(学級活動)で、アドバイザーと担任らが新聞の記事や写真を使い工夫を凝らした授業を展開。児童生徒は教科書で得た知識を現在の社会の動きや地域の取り組みに結びつけ、学びを深めた。

 授業は、教師4人と新聞記者3人が担当教諭と連携し展開。校内研究会に設定した学校もあり、多くの学校関係者が授業後の演習、講義も通じNIEの手法を学んだ。

 児童生徒は、記事や写真、社説・論説など教科書を離れた資料に目を輝かせ、一生懸命にキーワードを探し意見交換。既習の知識が自分たちの地域や日々のニュースに結び付くことを実感するとともに同じ出来事でも異なる意見・主張があることに触れ多角的な見方・考え方を身に付けた。

 参観した教員は、児童生徒の生き生きした表情や考えが深まる姿に「読み取りが深まり、経験・知識の広がりを感じた」「子供たちの『知りたい』に応える方法を学んだ」「低学年、特別支援学級でも生かせる」と新聞活用の可能性を感じ取っていた。

 
毎年行われる照井堰安全祈願祭の記事を取り上げた一関小の授業
一関小

先人に近づく児童

 

 

 4年・社会「昔から今へと続くまちづくり」の単元で、岩手大付属小の関戸裕教諭が授業を行った。照井堰(てるいぜき)の安全祈願祭を伝える本紙記事を活用。身近にあり地域産業を支える堰を造った先人の苦労や願いを児童に近づけた。関戸教諭は「新聞は子どもにとって難しいと考えがちだが、難しいところは飛ばして読み、必要な情報をつかんでいく」と説明した。

 (2019年9月10日)

 
単元に合わせた新聞で広島原爆を学習する北松園小の授業
北松園小

心動く力ある教材

 

 

 6年・国語「よりよき未来のために、心に平和のとりでを築こう」の単元を仙北中の長根いずみ教諭が担当。児童は原爆ドームを取り上げた教科書の意見文を学習後、原爆特集の紙面で、大きな惨害、犠牲者、生存者の苦しみを感じ取った。長根教諭は「何を学ばせたいかが大切。新聞は力ある教材で子どもの心を動かす。話題を予測し集めると便利だ」と助言した。

 (2019年9月27日)

 
4紙の社説・論説の読み比べを行った石鳥谷中の授業
石鳥谷中

論説文の主張比較

 

 

 3年・国語「新聞の社説を比較して読もう」で、読売新聞東京本社盛岡支局の渡辺理雄支局長が「表現の自由展」中止について4紙の社説・論説を読み比べる授業を行った。生徒はグループで1紙を読み、主張を読み解き発表。論調の特徴を渡辺支局長が説明し「いろいろ読むことで多面的な考え方ができるようになる。少しずつ読んでほしい」と呼び掛けた。

 (2019年10月8日)

 
未来の自動車について、記事を読みグループで話し合う浄法寺小児童
浄法寺小

社会の動向、教室に

 

 

 5年・社会「自動車づくりにはげむ人々」で県立総合教育センターの女鹿芳文主任研修指導主事が、4紙の東京モータショーの記事を活用。児童は全てEV(電気自動車)を大きく取り上げている点に気付き、環境への配慮が時代の要請であることを学んだ。女鹿氏は「社会の変化が激しい現在、今の動向を踏まえる授業に新聞は威力を発揮する」と説いた。

 (2019年10月31日)

 
新聞の写真を中心に展開した岩泉小の学級活動の授業
岩泉小

低学年も生き生き

 

 

 2年生の復興教育、社会参画意識の醸成を目指す学級活動の授業を岩手大付属小の菅野亨副校長が提案した。題材は「災害に負けない-誰かのためになる喜び」。東日本大震災の避難所生活、支援、児童生徒の活動を報じる11年3月の本紙を使い写真10枚を中心に展開。「自分にできること」を考えた。菅野副校長は「写真の持つ情報は多く、低学年でも読み取れる」と解説した。

 (2019年11月7日)

 
教師と新聞記者が連携し、津波や古里の未来を考えた高田東中の授業授業
高田東中

記者と教師が連携

 

 

 3年・社会「安心して暮らせる社会」「私たちにできること」で、本社報道部の太田代剛専任部長、NIE・読者部の礒崎真澄専任部長、金野節子教諭が連携し授業を展開した。津波の石碑と教訓を追う「碑(いしぶみ)の記憶」を教材に7時間で構成。明治、昭和、チリ地震の津波を報じる当時の記事や石碑訪問、語り部交流を通じ生徒は過去・現在・未来の視点で考えた。

 (2019年12月2~12日)

 

小野寺義務教育課長に聞く 百聞は一見にしかず

 

 NIE推進アドバイザー「新聞活用」出前授業の狙いや今後の展開、新聞活用の教育的効果について、小野寺哲男・県教委義務教育課長に聞いた。

(聞き手 NIE・読者部 礒崎真澄)

 -出前授業の狙いは。

 「NIEの具体的な手法や狙い、授業との関連づけなど知られていない点は多い。百聞は一見にしかず。アドバイザーは、一つの大きな記事を使ったり、複数の記事で違った見方・考え方を示したり、身近な話題で教科学習を深める授業を展開した。アプローチを学べば教育の質が向上する」

 -手応えと期待は。

 「『新聞には考えを深める効果があると感じた』など参会者の認識が深まった。新聞は教科書と違う見方・考え方で迫る学習を可能にし、教師の情報収集力、興味関心も高める。各教科領域で広く活用してほしい」

 -新聞活用の利点は。

 「予測困難な時代の中、社会を創造していく子どもたちには、情報や情報技術を適切、効果的に活用し問題を発見・解決して自分の考えを形づくる能力が重要だ。新聞活用を資質・能力の育成につなげたい。また、記事は、時間軸、根拠を基に書かれ、写真やグラフなどテキストもさまざま。論理的な思考に結び付く」

 -情報教育における学校の役割は。

 「主体的に情報を収集・活用し、より良い生活に結びつける見方・考え方が大切。同じタイトルでも観点が違う報道がある。『違うぞ』という気付きや『違うのでは』との批判的な読みの力を育てる役割がある」

 「新学習指導要領のキーワードについている言葉が大事だ。知識・技能は『生きて働く』、思考力・判断力・表現力等が『未知の状況にも対応できる』、学びに向かう力・人間性は『学びを人生や社会に生かそうとする』。新聞を読み、学校で学んだ知識が『これはあれとつながる』と生活の中で働く。『どうなんだろう』と調べれば、未知のものに出合った時の思考力・判断力・表現力となり、学びに向かう力として人生に生かそうとする」

 -NIE推進の展望は。

 「NIE全国大会のレガシー継承として始まった新聞活用推進事業は来年度も継続し、各教科等の狙いを達成する効果的活用の周知を図る。教員が『何だか面白い』と感じるようになれば、仕事のために読むのではなく自分の立ち位置の地盤が耕される感覚が出てくる。負担を感じない意識まで持っていきたい」