新年早々、花巻市星が丘のるんびにい美術館を訪れた。自らの感情を思いのまま表現したアール・ブリュットと呼ばれる作品に興味を持ったからだ。

 きっかけをつくってくれたのは昨年12月、JR花巻駅の東側の窓ガラスのほぼ全面に展示された八重樫季良さん(63)の作品だ。カラフルで心をワクワクさせる作品で見慣れた駅が華やかになり「アートはもっと街に出ていいんだ」と直感した。

 展示が始まる前日、駅で取材陣に囲まれた八重樫さんは笑顔で万歳したりピースサインしたり。言葉のやりとりは難しいが誇らしげな表情だけで心境が十分に伝わり、作品に込めた思いもひしひしと感じられた。

 障害がある人が生産に携わったシードルが花巻から2月にデビューする。醸造元は花巻市幸田に昨年オープンした果実酒醸造所、アールペイザンワイナリー。高品質なりんご酒を味わうことを通じて交わされる作り手と飲み手のコミュニケーションが待ち遠しい。

 障害の有無にかかわらず人格と個性を尊重し合える「共生社会」の理念は2020年東京五輪・パラリンピックでも打ち出されている。アール・ブリュットが街を彩り、シードルが人と人との会話を弾ませる。花巻にまた一つ、魅力が加わった。

(新沼 雅和)