性的少数者(LGBT)をはじめ、誰もが生きやすい社会をどうつくるか。先月の盛岡市議選を通じて浮き彫りになった、LGBT当事者たちの意識の変化から、国の動きを待つことなく、自分たちの地域でつくっていこうという主体性の高まりを感じる。

 市議選では、レズビアンであることを公表する加藤麻衣さんが無所属で出馬し、全体2位の4425票を獲得して初当選した。市内外の当事者の反響の中で、最も印象深いのが「岩手にいてもいいのかなと思えた」という言葉だ。

 LGBTは、各種統計で十数人に1人とされる。ごく身近にいるはずだが、その存在は見えにくい。

 偏見が根強いからだ。LGBTは「生産性がない」などと公言する政治家や、差別的な特集を組む雑誌。賛同するネット上の書き込みは後を絶たない。

 一方、そのような風潮にあらがう運動や、当事者同士が支え合うネットワークづくりの動きも、首都圏など大都市部が盛んだ。とりわけ地方では、多くの当事者が息を潜めて生きている。

 そんな中、盛岡市議選のインパクトは大きい。盛岡のみならず、各地の当事者が「私がいてもいいんだ」と思える環境づくりの必要性を浮かび上がらせたとも言えよう。

 偏見を背景にした生きづらさの解消が求められる。かつて、同性愛男性の自殺未遂率が異性愛男性より高いという調査が注目された。近年は、性的指向や性自認を本人の了解なく暴露(アウティング)される被害の深刻さが知られるようになってきた。

 自殺対策基本法に基づく総合対策大綱は、性的少数者をハイリスク層として「理解促進の推進」を掲げている。地域での対策を進める上でも、問題意識を共有していく取り組みが欠かせない。

 多様性尊重の試金石となるのが、同性カップルを「結婚に相当する関係」と認めるパートナーシップ制度。東京都渋谷区が初めて導入し、最近では長崎市など地方にも広がる。東京都議会では、LGBTへの差別解消を目指す条例が成立した。

 ただ、国政レベルの動きは依然として鈍い。先の参院選では各党がLGBTをめぐる政策を掲げたが、温度差が目立った。野党の多くは、同性婚や差別禁止に向けた法整備に積極的。自民党は、LGBTへの正しい理解を広めようと議員立法を策定する方針を掲げながらも、党内には保守的な価値観を持つ議員が多く「LGBTばかりになったら国はつぶれる」といった発言も出ている。

 多様性を尊重する社会の実現へ、地方がつながり、国を動かしたい。