「やじ」の元になった「やじ馬」は、「一説に『おやじうま』の略で、老いた雄馬ともいう」と広辞苑にある。「役立たず」「人の後方にいて無責任に騒ぎ立てる」といった意味の言葉だ

▼「おやじうま」には肩身が狭いが、さりとてやじが全く役立たずかとなると、そうとも言えまい。かねて国会のやじは「議会の華」。大正期に「やじ将軍」と称された三木武吉に、今も語り継がれるやじがある

▼原敬内閣の大蔵相で「だるまさん」の異名を取った高橋是清が軍予算に関し「陸軍は10年、海軍は8年の…」と言うと、すかさず「だるまは9年」。達磨(だるま)大師の面壁9年の故事にかけて、議場を大いに和ませた

▼やじを飛ばされる側も、時に気の利いた切り返しで相手をへこませた。麻生太郎副総理の祖父に当たる吉田茂は「おまえが総理をやるのか」と言われ「あなたが代議士(衆院議員)をやっているのと一緒です」

▼今や国会のやじに機転も機微もなく総じて不寛容。「華」どころか鼻つまみ者だ。累は庶民にも及び、政権幹部の街頭演説をやじった聴衆が警察に排除される事案が相次いだ。警察は「予防的介入」と説明する

▼職権乱用だと警察が告発される一方、政権には排除を是とする向きも。権力の暴走は歴史の教訓。「おやじうま」だから言うのじゃないが、とげとげしさが鼻につく。