サウジアラビアの石油施設攻撃を巡り、中東情勢が緊迫している。攻撃は直接的な被害にとどまらず、周辺に大きな波紋を広げている。

 隣国イエメンの反政府武装組織で親イラン勢力のフーシ派が犯行声明を出したが、ポンペオ米国務長官は「イエメンからの攻撃だという証拠はない」としてイランの仕業と断定、「世界のエネルギー供給に対する前代未聞の攻撃」と非難した。一方のイランは関与を否定している。

 サウジと関係の深い米国はイランと対立している。もしもイランとの戦争に突入するようなことがあれば、中東は大混乱に陥る。

 事態の収拾に向けて関係国の努力が必要だ。だが、状況は厳しさを増している。英仏独3カ国が共同声明で「イランに責任があるのは明白」として米国の主張に同調したからだ。

 しかし、かつて「大量破壊兵器開発」を理由に米国が「有志連合」を率いて開戦したイラク戦争のようなことがあってはならない。

 イランと良好な関係を保つ日本は、仲介の期待が寄せられる存在だ。安倍晋三首相はイランのロウハニ大統領との最近の会談で、施設攻撃について同国が関与したのではないかと疑いの目を向けたが、冷静な対応が求められる。

 日本は多くの石油をサウジに頼っており、輸入減少は国民生活に影響を及ぼす。

 過去には中東戦争でパニックが発生した。1973年の第1次石油危機は苦い教訓を残す。第4次中東戦争に伴うアラブ産油国の禁輸、生産削減を受け、国際石油資本(メジャー)などが原油大幅値上げに続き供給削減を通告。物価上昇やパニック買いで消費者が大打撃を受けた。

 第1次危機後、国は石油備蓄増強を図り、久慈などに国家備蓄基地の建設を進めた。民間備蓄もある。今年7月末時点で国内消費の236日分を確保しており、一定期間は対応できる。必要以上の不安を招かない政府の危機管理を求めたい。

 とはいえ原油価格が高止まりすれば、経済に及ぼす影響は計り知れない。石油の9割近くをサウジをはじめとする中東に依存する日本は大きく揺さぶられる。

 国連のグテレス事務総長は「武力紛争に発展する可能性」に危機感を表明している。各国は共有すべきだ。

 石油施設攻撃で世界を驚かせたのは手段が無人機とされることだ。飛躍的に技術が向上し価格は安い。低コストで甚大な打撃を与えた事実は、広大な国土に重要施設が点在するサウジなどの脅威となった。攻撃抑止のために、中東全体の政情安定化に向けた努力が改めて求められる。