身長2メートル、体重100キロ超もあろうかと思える男たちが激しくぶつかり合う。楕円(だえん)形のボールを蹴る鈍い音。釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアムは観客席とフィールドが近い。ラグビーW杯の会場で最も迫力を体感できる会場だろう

▼ボールを持った選手が突進し、タックルを受ければ、即座にくるりと胸を後方(自軍側)に向け次なる攻撃の起点となる。前へ進むために後ろを重視する。よく考えれば不思議なスポーツだ

▼走る競技であることはその通りだが、先日のフィジー対ウルグアイ戦。ボールを持って走った距離はフィジー746メートル、ウルグアイ288メートル。走った距離だけ得点につながりそうなものだが、勝者はウルグアイ。ゴール前の防御が勝因であることを裏付ける

▼心を一つにすることが困難な時代。とかく「復旧・復興」の言葉でひとくくりにしがちだが、被災者の歩みはそれぞれ。心を一つにされたくはないが、心を一つにしてみたい。そんな景色が鵜住居スタジアムにはあった

▼前(未来)へ進むために、後ろ(過去)を大切に。ラグビーというスポーツを通して震災8年半のメッセージを発信するのはある意味、必然だったのかもしれない。忘れないと

▼試合が終わり1時間半後、釜石で震度3を観測した。偶然とは思えない揺れに、亡くなられた方々の遺訓をしっかり受け止めた。