国の土台を揺るがしかねない問題に、やっと政府が本気を見せ始めた。中小企業の後継ぎを確保する「事業承継」の支援を広げる。

 親族や身内に後継ぎがいない。そんな中小企業の経営者が「第三者」に事業を譲るのを後押しする。経済産業省が来年度の税制改正と概算要求に盛り込んだ。

 これまでの支援は、子どもなど親族への代替わりが中心だった。中小、個人事業主が子どもなどへ事業を譲り渡す際、相続税などを猶予する特例が既にある。

 だが、子どもに家業を引き継ぐ意欲がないケースは多い。首都圏で働いていれば地元に戻る気も薄れる。従業員の中に引き受け手が見つからない例も少なくない。

 そうなると経営者は後継ぎを確保できず、廃業の道を選ぶしかなくなる。企業の休廃業は全国的に急増して昨年は4万6千件を超え、うち半数は黒字経営だった。

 経営が安定しているのに後継ぎがいない。自らも年を取り、やむなく商売をやめる。悩み抜いて決断する経営者の姿が浮かぶ。経営者の高齢化が進む日本の現実だ。

 親族以外に事業を譲ることができれば、存続に光明が差してくる。政府は支援として株譲渡にかかる税の軽減などを検討するが、効果の高い制度づくりを求めたい。

 日本経済を支える中小企業の廃業が相次げば、損失は極めて大きい。政府は2025年までに650万人の雇用と国内総生産(GDP)22兆円が失われるとみる。

 地域の持続にも大きく関わってくる。岩手経済研究所の昨年調査では、60歳以上の中小企業経営者の半数は後継者が未定で、事業を引き継ぐ準備もしていない。

 人々を雇って給料を払い、納税する中小企業は地域力の源泉と言える。それが急激に消えていけば、岩手が進める東日本大震災からの復興にも影響してこよう。

 もっとも「第三者」への事業承継に課題は多い。まずは人探しだが、意欲が高く、経営の手腕もある人を見つけるのは楽ではない。

 ただ県内でも、盛岡市の県事業引継ぎ支援センターの仲介で、全く面識のない人に事業を譲り渡したケースがある。外部の人材を探し、企業と結び付けた好例だ。

 これまでのセンターや金融機関の支援に、国の税軽減や補助金が加われば一層の後押しになる。県外にも視野を広げ、「外」の人材を生かす成功例を積み重ねたい。

 経営を譲る相手を見つけ、技術を伝え、取引先の信頼を得る。そこに至るにはかなりの時間がかかる。第三者への承継を望む経営者は、早めの決断と準備が求められよう。