待ち焦がれた瞬間、熱狂の渦が巻き起こる。青空に、大漁旗がはためく釜石市の釜石鵜(うの)住居(すまい)復興スタジアム。ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会のフィジー-ウルグアイが行われた

▼東日本大震災からの復興を象徴する地で試合開始直前、震災犠牲者に対する黙とうがささげられた。スタジアムを包む静寂。「あの日」起きたことに誰もが思いを寄せた。そして、世界中からの支援への感謝も

▼南太平洋の国々は、先住民の舞踊に由来するウォークライ(戦いの雄たけび)を披露する。ニュージーランドのハカもそう。フィジー代表は腰を落としてじりじりと前進し、斧(おの)を振り下ろすような独特のしぐさ

▼大地や祖先とつながることを願い、仲間との連帯を表現している。力強い動きは味方の士気を高め、戦う相手に敬意を示すメッセージだ。屈強なラガーマンの内に宿る精神が、ファンの心を引きつけてやまない

▼「覚えたフィジー語で交流したい」「復興が進む岩手で、良い思い出を」。被災地の子どもたちが、たくさんの夢を語った。地元の高校生は、震災の教訓を込めたうちわを観客らに配り、伝承活動に取り組んだ

▼言葉や文化の違いを超えて、一つにとけ合う思い。復興への願いが再び、世界へと広がっていく。W杯も、その後も。希望のメッセージを、被災地から伝え続けたい。