「令和」で話題の万葉集にはクイズのような表現もある。「二八十一あらなくに」は、2と9×9=81で「にくく」と読む。すなわち「憎くない(とてもかわいい)」

▼同じく「朝猟(あさがり)に 十六踏み起こし 夕猟に 鳥踏み立て」の十六は4×4で「しし」。つまり鹿や猪(いのしし)を指す。「(わが君は)山野に踏み込み朝の狩りでは鹿や猪を追い立て、夕狩りでは鳥を飛び立たせる」

▼鹿を追い立てるのは昔は狩人だったが、今は意外なものと聞く。JR盛岡支社の鹿対策が注目されている。早朝や夜はレーザー光を照射し、ライオンのふんから抽出した液剤をまいて鹿を線路に近づけない

▼対策が行われた釜石線は、管内で鹿・カモシカ接触事故の4割近くを占める。今夏は、釜石の三陸鉄道でも子鹿がトンネルに迷い込む騒動があった。野生の動物を追い立て、安全運行を守るのは大変らしい

▼それも、あすに迫った釜石でのラグビーワールドカップ(W杯)戦のためだ。試合のある25日と10月13日は釜石線を臨時列車が走り、三鉄に乗り入れる。無邪気な鹿のために、遅れを出すわけにはいかない

▼目に見えぬところで、いかに多くの人がW杯に関わっているか。その一例だろう。大会成功を願い、ライオンのふん由来の液を鉄路にまく人もいる。待ちわびたイベントを、さまざまな裏方が支えている。