無料でインターネットのサービスを受ける代わりに、自らの個人情報を差し出す。でも、その情報が何に使われているか分からない。

 情報が乱用されかねない個人を、どう守るべきか。「プラットフォーマー」と呼ばれる巨大IT企業の規制指針案がまとまった。米グーグルなどを念頭に置く。

 国民が意外に思うのは、案を出したのが談合事件などを扱う公正取引委員会だったことだろう。しかも適用する法が個人情報保護法ではなく、独占禁止法である点だ。

 独禁法は、企業の取引にのみ使われてきた。優位な立場にある会社が、取引先に協賛金の負担を押し付けたりするのを「優越的地位の乱用」として禁じている。

 それを企業と個人にも当てはめる離れ業だ。なぜなら、個人の情報は事業に利用される。お金と同じ経済的な価値があり、「取引」が成立するとの考えに基づく。

 巨大ITは圧倒的な情報量や交渉力があり、個人に比べて強い立場にある。取引関係があるならば「優越的地位の乱用」を適用できる-と公取委は考えている。

 公取委調査では、自分の個人情報が「経済的な価値」を持つと考える人が66%に達した。IT企業が個人情報を勝手に使わないでほしい、と思う人も半数に上る。

 個人情報とは何か。その価値を見直し、消費者の保護を強める良い機会だ。独禁法による命令、課徴金などの武器を持つ公取委の今後の取り組みに期待したい。

 規制案は、個人情報の収集や利用で法律違反になる例を挙げた。利用目的を知らせないことはもちろん、その説明の方法も問題となる。

 利用規約の文章が曖昧だったり、使われる専門用語が理解できない。こうした例を経験した人は多いとみられる。説明がどこにあるか分からない場合も対象になる。

 同意を得ず、第三者に個人情報を提供する場合も「乱用行為」とした。就職活動中の学生の内定辞退予測データを、本人の同意を得ずに企業に販売した「リクナビ」問題がこれに当たる。

 就職情報サイト「リクナビ」は、ほぼ全ての就活生が登録し、なくてはならない。巨大な存在は「優越的地位」にあると考えられる。

 この問題では、個人情報保護法による勧告の限界が指摘された。独禁法による課徴金などが命じられることになれば、個人情報を扱う多くの企業に警鐘となろう。

 一方で課題は、新たな独禁法違反に対応する公取委の人員だ。職員は800人ほどにすぎず、データビジネスに詳しい人材もまだ少ない。態勢の強化は急務と言える。