街は高層ビルが林立し、大量の車とオートバイの喧騒(けんそう)でごった返していた。5年前に訪れたインドネシアの首都ジャカルタ。この国で今、首都移転の計画が持ち上がっている

▼ジャカルタのあるジャワ島は、国の人口の約5割が集中する。首都の移転は他の島との格差を改善しようと、大統領が表明した。30年ほど前、日本でもバブル景気のさなかに国会や省庁など首都の機能を東京から地方に移す動きが強まった

▼その後、移転論議は不況もあって立ち消えた。似た話を近年、久々に持ち出したのが安倍首相。スローガンは「地方創生」。地方の人口減を食い止める狙いから見れば、施策への期待はかつてを上回る

▼ただしやはりと言うべきか、成果は薄そうだ。全面移転は京都に移る250人規模の文化庁だけ。徳島が候補地だった消費者庁は、80人程度の部分移転にとどまる。同庁の大半の仕事は東京に残るというから、「部分」には実績ありきを感じてしまう

▼政府は今後、企業が地方に拠点を移すための「アメ」を増やす。人も情報もそろう便利な都会。離れる決断ができる企業はどれだけあるだろう。難しさは、お上が一番分かっていよう

▼インドネシア大統領の任期は2024年まで。詳しい移転地や時期は明らかにされていない。くれぐれも「やってる感」で終わることなきように。