東日本大震災の教訓を国内外に発信する本県の拠点施設、津波伝承館「いわてTSUNAMIメモリアル」が22日、開館する。

 陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園内に整備。「命を守り、海と大地と共に生きる」をテーマに、流失した気仙大橋の橋桁などの展示、津波襲来時の映像、被災者の証言などで構成し、解説は英語や中国語にも対応する。伝承館と防潮堤の間の「献花の場」などの利用も始まる。

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の観戦などで本県を訪れる国内外の観光客は、ぜひ足を伸ばしてほしい。三陸鉄道などを利用し、釜石市鵜住居町の伝承施設「いのちをつなぐ未来館」、宮古市の震災遺構「たろう観光ホテル」なども巡ることで、津波がどれだけ広範囲に甚大な被害をもたらしたかを知ることができる。

 震災から8年半。被災地を訪問し、家族が津波の犠牲になったり、今なお生活再建が進まない被災者の話を聞くにつけ、風化への危機感が強まっていると感じる。

 見た目は復興が進んでも、「あの日」にとどまったままの自分の心。津波の猛威の痕跡が姿を消していく中、「こうして、忘れられていくのだろうか」とつぶやく被災者の孤立感は深い。

 その意味でも、今、伝承館の開館の意義は大きい。「あの日を忘れてはならない」という思いを多くの人が共有することは、被災者の孤立感を和らげるとともに、各地で地道に伝承活動に取り組む人たちの励みにもなるだろう。

 風化にあらがい、教訓を次代に確実に継承する。そのため、震災の被害を心に刻むことはむろん、地震や津波発生のメカニズム、明治・昭和の三陸大津波など自然災害の歴史、さらには三陸や日本列島の成り立ちまで、幅広く学びを深めたい。

 東日本大震災後、学際的な調査研究が進み、知見が蓄積されている。だが、どこまで住民に還元され、共有されているだろうか。

 その試金石となるのが「三陸ジオパーク」。多様な地質遺産を中心に、震災の教訓継承も柱に据えた自然公園として、2013年に日本ジオパークに認定された。ユネスコが認定する世界ジオパークへの着実な歩みが期待される。

 ところが、4年に一度の再認定審査でつまずいた。17年、日本ジオパーク委員会から「理解と活用が進んでいない」などと指摘を受け、2年間の「条件付き再認定」に。今年11月の再審査で、再認定か認定取り消しかが決まる。

 住民の理解と主体的な活用の取り組みが再認定の鍵を握る。伝承館の開館を機に、ギアを入れ直したい。