世界三大スポーツイベントの一つ、ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会が幕を開けた。4年に1度の楕円(だえん)球の祭典をホスト国で迎えた日本はロシアとの初戦を白星で飾り、目標のベスト8へ好発進した。11月まで続くこの熱気から、どんなレガシー(遺産)が生まれるだろう。

 ボランティア育成や国際交流の加速、それに伴うインバウンドの増加、地域活性化。「一生に一度」という好機を生かし、多方面にW杯効果が波及することを願う。

 アジア初開催となる大会のトーナメントマークが示すテーマは結束を意味する「ユニティ」。各国の選手、ファンが一体となり、欧州などの伝統国中心からグローバルスポーツへ競技の裾野を広げられるかが問われる。

 国内も同じことが言える。当初、10会場程度とされた開催地が最終的に釜石市など12会場に広がったのは、地方への普及を意図したものだ。

 多国籍選手が一丸となって勝利に向かう日本はまさにユニティを体現する。28日に対戦するアイルランドも英国の北アイルランドを含む統一チーム。国籍や国境にとらわれないラグビーの土壌は、そのまま多文化社会のあり方を考える契機となるに違いない。

 さらに自国開催で、かつてないほど高まったラグビー熱を追い風に国民的なスポーツとして人気定着を図りたい。振り返ると、1970年代から80年代にかけてラグビーブームがあった。それは東京・国立競技場を満員にできた早明戦に代表される大学チームが常に先頭に立ってきた。

 日本が歴史的な3勝を挙げた前回W杯が第2次ブームと言えようが、長続きしなかった。それはトップリーグの観客動員数からもうかがえる。約49万2千人だった2015~16年をピークに昨季は約45万9千人に落ち込んだ。

 ブームは消費され、いずれ終焉(しゅうえん)を迎える。大会後、ラグビーが文化として根付くかどうか。世界トップレベルの技と力に触れ、多くの人に競技そのものの魅力を知ってもらう。そこから競技人口の拡大に結びつけば望ましい。

 東日本大震災の被災地、釜石市では25日と来月13日に熱戦を繰り広げる。復興する姿と支援への感謝を発信する2試合は、ともに震災犠牲者を悼む黙とうが行われることになった。世界と鎮魂の祈りを共有し、津波の教訓も伝える機会となろう。

 被災地の思いを酌み取った組織委員会の判断を了とするが、一方でキャンプ地では練習日程が公表されず、選手と市民の交流機会が制限されている。こちらも何とかならないものか。各チームと自治体を橋渡しする組織委員会に一考を求めたい。