復元された高さ約11メートルの正門を見上げると、古代国家権力の強大さを実感する。803年に造営された志波城(盛岡市)。当時この地に住んでいた人々の驚きは、現代人の比ではあるまい

▼古代国家による東北の統治経営拠点「城柵(じょうさく)」の一つで、一辺840メートルの正方形に設計。一方、志波城を移転させる形で812年ごろ造営された徳丹城(矢巾町)は一辺約356メートル。コンパクトで機能的な作りだ

▼規模の違いの背景には、時代の移り変わりがある。志波城は領土拡大政策の最前線として巨大で威圧的。だが、その多大な経費が社会の疲弊を招いたため、国家は政策転換。新たな時代を象徴するのが徳丹城だ

▼盛岡から矢巾へ。岩手の医療新時代へ。21日、岩手医大付属病院が移転する。地上11階の新病院は、高度な手術室など最新の設備を導入。24日から外来診療を開始する

▼災害対応も万全を期す。東日本大震災を教訓に、電源供給喪失時も1週間程度は病院の全機能を維持できるエネルギーセンターを備えた。南海トラフ地震などの発生時には現地病院のバックアップの役割も担う

▼徳丹城への移転の一因は、志波城が何度も水害に襲われたことだった。古来、幾多の自然災害に苦しめられてきた岩手。まずは入院患者を無事に搬入し、新病院が「安心の時代」を切り開いていくことを願う。