中小企業で賃上げ圧力が高まっている。人手不足に加え最低賃金アップや働き方改革の政策が背景にある。

 賃上げが経営に及ぼす影響は、大企業に比べて中小企業がより大きいと言える。場合によっては企業存続に及ぶ。

 健全経営の中で持続的に賃上げするためには生産性向上が欠かせない。経営者と労働者が力を合わせて知恵を絞りたい。

 人手不足が著しい。県内の7月の有効求人倍率(季節調整値)は1・36倍。米中貿易摩擦の影響もあり1・4倍を下回ったが、依然として高い水準だ。人材確保に正社員の初任給アップやパート時給引き上げなどが欠かせなくなっている。

 待ったなしで賃金アップとなるのは、最低賃金近辺の労働者だ。

 本県の最低賃金は28円(3・67%)増の790円に改定され、10月4日発効。現在の時給額が改定額を下回る労働者の割合(影響率)は15・4%に上る。引き上げ額、率とも現行方式では過去最高となる中で経営者は対応が迫られる。全体の賃金体系にも波及する。

 さらに今後は、働き方改革への措置も加わる。基本給や賞与などの待遇について正当な理由のない待遇差を禁じる同一労働同一賃金制度は、中小企業では2021年4月から適用となる。

 賃上げの鍵は労働生産性の向上だ。

 岩手経済研究所によると、本県の生産性は震災の復興事業などにより上昇。06年度から10年度までの5年間は全国40位台後半と低位で推移していたが、その後順位を上げ、15年度は34位だった。

 また、アンケートによると、県内企業の多くは生産性向上に取り組んでいるが、「IT(情報技術)や多能工化などの新しい取り組みに慎重で、改善の余地がみられる」と分析。「伸び代は十分ある」としている(「岩手経済研究」19年2月号)。

 賃金増は労働者の暮らし改善に欠かせない。ただ、企業の人件費負担が重くなることで従業員削減の懸念も招く。雇用を確保しつつ賃金増を図るにはどうするか。

 企業の生産性向上や新たな分野開拓には働く人の能力アップが前提となる。人材育成の積極的な投資や先端技術活用に取り組むことが必要で、国の支援拡充も望まれる。

 日本経済全体では、賃上げの余地は十分あろう。2018年度の法人企業統計によると、企業が蓄えた内部留保に当たる利益剰余金は7年連続で過去最高を記録した。

 内部留保の多い大企業が取引先の中小に対しいかに還元するかが問われる。産業界全体への目配りを求めたい。