「人生100年、まだまだ頑張らないと。この子を残して死ぬわけにはいかない。食べさせなくちゃならない」

 「世の中は、老後2千万円問題で騒いでいるけど、自分には関係ない。日々のやりくりで精いっぱい」

 ひきこもりや、障害を抱える子どもを支える高齢の親と語り合う。悲痛な語りを聞くにつけ、国の社会保障施策が、いかに一面的にすぎないかを痛感させられる。

 老後2千万円問題は、金融庁金融審議会の報告書で火が付いた。男性が65歳以上、女性が60歳以上の夫婦のみの世帯では、公的年金を中心とする収入約21万円に対し支出は約26万円で、月5万円の赤字となり、今後30年生きるなら2千万円が不足する。そのため、計画的な資産形成が必要という理屈だ。

 そもそも、このようなモデルケースが、高齢者全体の置かれている状況を、どの程度反映しているだろうか。伴侶が認知症になったり、病気や障害を抱える子どもの介護を担っている場合、収入も支出も先が見えない。未婚や離婚に伴う単身世帯も増加。自然災害で被災し生活再建に追われる中、貯蓄どころではない高齢者も多い。

 きょうは「敬老の日」。厚生労働省によると、100歳以上の高齢者は初めて7万人を突破した。長い人生を見据え、定年後も働き続けたり、公的年金不足分を補うため資産運用の勉強を始めたり。生き生きと地域貢献に励む高齢者の姿も目に付く。

 一方で、このような「明るいお年寄り」像から遠く離れ、過酷な現実を生きるお年寄りも多い。その心情にも思いをはせる日でありたい。

 政府は社会保障制度改革に向け、近く新たな会議を創設する。公的年金受給開始年齢の70歳超への選択肢拡大、後期高齢者の窓口負担を原則1割から2割に引き上げることなどを取り上げる見込みだ。

 少子高齢化が進み、年金財政も悪化する中、高齢世代に一定の負担を求めることは避けられまい。若者世代への支援を拡充し、世代間格差を解消していかないと、支え手はなかなか増えないだろう。

 ただ、世代内格差にも目を向ける必要がある。困難を抱えた高齢者の実態把握に向けた国の動きは鈍い。例えば、ひきこもりの本人と家族の高年齢化問題。ようやく内閣府が実態調査に着手し、今年、中高年(40~64歳)のひきこもりが推計61万人超と発表した。61万人の背後には、膨大な数の年老いた親がいる。

 元気な高齢者の活躍を後押しすると共に、苦しみを抱える高齢者を支え、世代内格差を解消していく。「長寿大国」の名に恥じない社会保障制度改革が求められる。