金融庁は2019事務年度(19年7月~20年6月)金融行政方針で、地方銀行の経営改善に向け、再編(統合・合併)などによる抜本改革を促す態度を鮮明にした。

 再編という究極の経営判断をお上が主導する動きには、常に賛否がある。ただ、超低金利政策の下、県内3行をはじめ全国の地銀経営の厳しさは決算からも明らかだ。

 金融サービスが多様化・複雑化し、担い手も乱立する時代。地域の住民、企業が安心して頼れる金融機関として存続できるか-。地銀は終わりの見えない正念場にいる。

 金融行政方針は今後1年の同庁の重点施策。再編の環境整備として、同一県内の地銀同士でも統合などに取り組みやすいように、独禁法の適用を除外する特例法をつくる。他方、収益力や財務の健全性に問題があれば業務改善命令も辞さない。アメとムチで改革を迫る国の思惑が透ける。

 銀行決算で通常「本業のもうけ」と表現されるのがコア業務純益。貸し出しや投資信託販売などの手数料ビジネスで得た利益のほか、保有する国債、株式などの有価証券から生まれる利息・配当金が含まれる。

 これに対し金融庁は、本業を「顧客向けサービス(貸し出しと手数料ビジネス)」と狭義に定義する。同庁によると、2019年3月期に2期連続で本業赤字の地銀は、全国105行中45行に上る。

 個別の状況は公表されていないが、関係者によると19年3月期は県内3行中2行が赤字で、残る1行も18年3月期は赤字。これは基幹収入の貸出金利息が低金利競争で低迷する中、コア業務純益の黒字化を店舗の統廃合など経費の圧縮や有価証券運用に頼る構図を浮かび上がらせる。

 ある県内地銀の幹部は金融行政方針について「再編へのメッセージ」と話す一方「目新しさはない」とも。全国では統合・合併や資本・業務提携が着実に広がるが、そもそも銀行界には現行の低金利政策への不満が強い。将来不安を強調して抜本改革を求めても、成果は限られよう。

 地銀側の期待が大きいのが、業務範囲規制の緩和だ。国内の会社や地域商社への出資がしやすくなり、自前で対応が難しい人工知能(AI)などデジタル技術の活用や、地場産品の付加価値向上・販路創出などの主体的な取り組みが可能になる。既に県内行にも活用の動きがある。

 今後の金融サービス市場は人口減で縮小が必至。地銀が持続的な経営体制の構築に向け、統合や合併を選択することに疑問はない。ただ改革の前提には、求められる金融のあり方について地銀と地域、地銀と国の真摯(しんし)な対話があるべきだ。