「秋の日はつるべ落とし」。暗くなるのが早い。そして夜が涼しくなっていくと、温かい食べ物がおいしさを増す。その一つ、おでんが恋しくなる。街の飲み屋さんでも、家庭の食卓でも

▼おでんは昔から日本人に親しまれた「元祖ファストフード」だという。コンビニでも人気があるのは当然と言えようか。ちなみにおでんは豆腐の田楽から発展し、「田楽」という名前は伝統芸能に由来するとか

▼具材は多彩だ。大根、ニンジン、ジャガ芋など野菜類。白滝などコンニャク類。がんもどき、焼き豆腐、巾着。卵、タコ、昆布、肉団子。そして欠かせないのが、さつま揚げ、ちくわ、はんぺんなど練りものだ

▼練りものは魚肉をすりつぶして成型し、「蒸す」「焼く」「揚げる」「ゆでる」などの加工によって味わいのバラエティーを広げる。豊かな海に囲まれた日本に長く伝わる食材。先人の知恵と工夫に感謝したい

▼しかし心配が出ている。原料のすり身の価格高騰だ。現在、多くを輸入に頼っているが、欧米や中国で魚の消費が増えている影響が大きくなってきた。主力のスケトウダラは2年前より約3割の値上がりという

▼サンマ不漁などを見るにつけ、水産大国日本の先行きに不安も感じる。世界で激化している魚の争奪戦。おでんの具材一つにも、昨今の水産事情が練り込まれている。