災害の時、安否が分からない人や避難している人の氏名公表をどうすべきか。災害対応に当たる自治体が悩み、問題提起している。

 全国知事会は、死者・行方不明者の氏名公表について、全国統一の基準づくりを国に求めた。大きな災害のたびに自治体が判断に迷い、対応が分かれるからだ。

 行方不明者については「原則公表」すべきだ。本紙は2年前、企画「あなたの証し」でそう提言している。死者も含めて何のための公表か、整理する必要があろう。

 昨年9月の北海道地震で、北海道厚真町は亡くなった36人全員の氏名を公表した。なぜなら、他に行方不明者がいないか。それを確定させるためだったという。

 地元の犠牲者全員を収容したと行政が考えても、まだ観光客や町外の人がいるかもしれない。いる可能性がある行方不明者の「命」を守るため、公表が必要だった。

 昨年の西日本豪雨では、岡山県がいち早く不明者の氏名を公表した。それにより情報が寄せられ、多くの人の無事を確認している。

 同じ災害でも愛媛県は、家族の同意が得られなかったとして非公表にした。4年前の関東・東北豪雨では茨城県常総市が不明者を公表せず、実際は無事なのに情報がないまま捜索を続けていた。

 公表しないことで、救える「命」が救えないことがあってはならない。災害はいつ起きるか分からず、原則公表に向けて直ちに国と地方は議論を始めるべきだ。

 自治体が公表を迷うのは、個人情報の問題がある。大半の個人情報保護条例では、緊急時なら情報を外部に提供できるが、プライバシーの侵害を恐れて踏み切れない。

 公表を巡り、地方が国に判断を仰ぐことには批判もあろう。だが今の災害は広域化し、ばらばらな対応では混乱を招く。国がある程度の基準を示すのが現実的だ。

 一方、避難者の氏名も原則公表が望ましい。東日本大震災で本紙は避難所にいる人の名簿を掲載した。公表は親類・知人の安否を気遣う人の「安心」につながる。

 課題は、ストーカーやドメスティックバイオレンス(DV)の被害者らへの対応だ。氏名の公表を望まない人への配慮は欠かせない。

 DV被害者らについて宮崎県は、住民基本台帳の閲覧制限がかかっている人は公表しないとの基準を決めた。公表と被害者保護の両立は、難題だが可能だろう。

 氏名公表を巡っては、被災者に取材が殺到するメディアスクラムの問題もある。報道機関として被災者の心情に配慮し、「命」と「安心」に資する報道を一層心掛けたい。