高齢化社会の進展、家族のかたちの変容に伴い、民法の相続ルールが大きく見直された。配偶者を亡くした人の生活の安定を図るのが狙いだ。

 相続や遺言について、「終活」ブームを背景に関心を持つ人が増えてきた。一方で、東日本大震災被災地の住民の「せっかく津波から助かった命。新たな生活が始まったのに、相続を考えたり話題にするのは、はばかられる」との声から、この問題のデリケートさが浮かび上がる。

 被災地に限らず、死を連想してしまう相続のことより、元気に長生きすることを考えたいという気持ちは分かる。ただ、相続が「争族」になってしまうケースは少なくないのが現実。配偶者と死別して生活困窮に陥る独居高齢者の増加も懸念されている。元気な今こそ、少しずつ備えを進めたい。

 相続ルールの大幅な見直しは約40年ぶりで、大半が今年7月に施行。婚姻期間が20年以上の夫婦の場合、配偶者が生前贈与や遺言で与えられた自宅は、遺産分割で取り分を計算する際の対象から外せることになった。

 配偶者と子どもが相続人の場合、遺産の取り分は原則各2分の1。自宅を計算から除外することで、その分、配偶者に預貯金などの遺産が多く配分される。

 配偶者が一定期間または終身、自宅に住むことができる「居住権」の新設(来年4月施行)と併せ、老後の安心につながる仕組みだ。

 相続のトラブル防止に重要な役割を果たす遺言。今回の見直しには、自分で書く「自筆証書遺言」の活用推進策が盛り込まれた。財産の一覧を示す目録に限り、パソコンなどで作成したものを添付できるようになった。

 自筆証書遺言を法務局に保管する制度も創設(来年7月10日施行)。紛失の心配がなくなるほか、偽造や変造を防ぐための家庭裁判所の「検認」手続きも不要になる。

 見直しのメリットを知り、生かしたい。現時点で「相続」や「遺言」を考えるのはハードルが高いのであれば、まずは自分にどんな資産があるか、ノートに書き出すことから始めたらどうだろう。預貯金、不動産、負債。さらには、葬儀や仏壇について。書き漏れを防ぐため、市販のエンディングノートを活用するのも手だ。

 近年は、人生最終段階の医療について、健康な時から考え、家族や医師らと繰り返し話し合って共有する取り組みが各地で広がっている。自分の望む医療やケアなどについて、ノートに書き添えてもいいだろう。

 家族や大切な人の将来を思えば、元気なうちにできることは多いはずだ。