就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリア(東京)が学生の同意を得ないまま内定辞退率のデータを企業に販売し、政府の個人情報保護委員会から勧告を受けた。売り手市場が続くとはいえ、学生の人生を左右する就職活動。不安や憤りの声が上がるのは当然だ。

 リクナビは就職活動を行う学生が利用する最大手のサイト。掲載企業は3万社以上、登録学生数は約80万人に上る。学生ごとに企業や業界サイトの閲覧履歴、志望動向といったデータを人工知能(AI)で分析し、個々の学生の内定辞退率を5段階で推計していた。

 算出に用いたのは、登録学生のうち約7万5千人分のデータだ。個人情報保護法では、第三者にデータ提供する場合に本人の同意が必要となるが、同社は7983人の学生から適切な同意を得ず、その他についても説明方法が不十分と指摘された。

 リクナビ側に、個人情報の取り扱いに関する認識の軽さ、甘さがあったことは否めない。提供サービスは8月初めに廃止するまで33社に販売。トヨタ自動車やりそなホールディングスなど名だたる大手企業も含まれている。

 人手不足で新卒の売り手市場が続く中、採用競争は激しさを増している。企業にとっては、せっかく出した内定者が辞退すれば採用活動に影響する。その残念なのは分かる。大手企業人気に押され、人材確保にしのぎを削る中小であればあるほど、その思いは強いはずだ。

 リクナビ側は「合否判定に使った企業は1社もない」と釈明するが、契約企業名の開示もなく信頼に足る説明といえるのだろうか。同社は勧告を踏まえ、9月末までに具体的措置を報告する。また、10月から個人情報利用をチェックするプライバシー責任者を置くという。

 しかし、学生らの不信感は消えない。県内企業で就業体験した男子学生の一人は「就活ではリクナビなどのサイトを利用せざるを得ない。内定辞退率の算定やデータ販売など、自分が想像もしていない使われ方をしていたことが怖い」と語る。

 就活生らは精いっぱいに自己を見つめ、会社説明会やインターンシップに足を運び、企業にアプローチする。情報収集から、選考応募への意思表示もサイトなどを活用。就活は情報戦と言われるのも、このためだ。

 そうして集めた個人情報を同意なく、リクナビが企業に渡していた事実は重い。経団連のルール廃止などに伴い、就職活動は過渡期を迎えている。その支援や在り方を巡っては、学生本位の視点が今後の議論に欠かせないだろう。