県内に滞在しながら働き、地域や企業、人とのつながりを体験する県の事業「ワーキングホリデー(ワーホリ)」が始まった。首都圏などから学生や社会人が参加し、真夏の岩手で汗を流している。

 夏と冬の2回行い、9月にかけての夏季は県内12企業で18人を受け入れる予定だ。宿泊など観光業のほか、食品製造、書店など受け皿となる事業所も多彩。10日間から2週間程度活動する。

 盛岡市のベアレン醸造所では8月上旬、日本大3年の北岡秀典さん(20)が働いている。イベント時のビール販売や商品の梱包作業など。期間中には、他企業の参加者とともに、さんさ踊りや街巡りなども楽しんだ。

 滋賀県出身の北岡さんは「旅行では得られない体験。地方創生に興味があり、ベアレンが地域のファンをどう獲得していったのかなど、いろんな人の話を聞きたい」。同社の嶌田洋一専務は「地方から『価値』を発信する可能性を、感じ取ってもらえたら」と期待する。

 若者が海外で働きながら観光や勉強をするワーキングホリデーは知られる。都市部の学生らが長期休暇を利用して地方で働く取り組みはいわば、その国内版。総務省が提唱し、担い手不足解消や移住促進を視野に全国各地で行われている。

 短期間とはいえ、地方での暮らしと仕事は、学生らにとって将来を見据えて経験を積む貴重な機会となるだろう。合間には地域の文化や歴史に触れ、人と出会う。岩手を離れても、ファンの一人になるかもしれない。

 事業の窓口となるジョブカフェいわては、継続的な就労支援に強みを生かしている。

 書店員の仕事を体験する内沢公宏さん(49)は青森県三戸町出身。進学を機に地元を離れ、今は首都圏で家族と暮らす。高齢になった両親の面倒をみたいと帰郷を探る中、企画を知った。

 「実家の生活圏から、岩手で働くことを選択肢の一つに考えている。いきなりのUターンはハードルが高いが、ワーホリでこちらの空気に慣れるいい機会になった」と内沢さんは言う。

 地方の人口流出が止まらない。政府の地方創生の基本方針には、都市部などに暮らしながら地方と関わる「関係人口」拡大も盛り込まれた。県内各地で取り組みに力が入る中、人と人、あるいは地域課題をつなぐ力がますます重要になっている。

 地域の良さ、魅力だけでなく、「何か足りない」とさえ思えるような日常も。外からの視点が、街や人に新たな刺激をもたらす。「可能性」を重ねられる地方に、人は集まる。