新トレ@盛岡大

 盛岡大文学部は5~7月、岩手日報社のNIB講座「新トレ(新聞トレーニング)」を取り入れた講座を展開した。中学校社会の教員を目指す学生を対象にした計10回、教材に新聞を活用。学生は新聞を隅々まで読み、社会への視野を広げるとともに、教育に新聞を活用するNIE(Newspaper in Education)への理解を深めた。最後の授業では、グループ学習で新聞を使った授業を構想。教壇に立ち新聞を使った授業を行う自身の姿を思い描き、記事の活用法を考えた。

  盛岡大が新聞を活用した科目は「社会科・地理歴史科教育法Ⅰ」。5月中旬から7月中旬まで週1回、学生25人に教材として新聞を配布した。毎回、講義の冒頭10~15分間で、新聞を隅々まで読み、各自関心のある記事を選び3、4人のグループでディスカッション。スクラップする取り組みを繰り返した。

 初めはぎこちなかった新聞を開く手が、回を追うごとにスムーズに。継続的に新聞を読み、グループで話し合う作業は活字メディアを知る機会になった。

講義の冒頭、新聞に目を通し、ディスカッションする記事を探す学生

 リポートには「あまり読んでいなかったが、興味のある出来事、必要な情報が多く掲載されている」「文字や扱いの大きさで大事なニュースが自然と目に入り分かりやすい」「短い時間で多くの情報が得られるメディア」と新聞の利点に気付いた記述が並ぶ。

 また「ネットニュースより深く考えられる」「記事を巡る話し合いで、視点や感じ方、考え方の違いを学んだ」「スクラップした記事を読み直し、自分の関心がボランティアであることに気付いた」と新たな発見に結びついた学生も。「新聞への興味が湧き毎日読むようになった」「世の中の出来事に対し関心が高まった」との記述もあり、購読、閲覧の習慣化がうかがえた。

 終盤の7月1日には岩手日報記者が「メディアリテラシーと新聞」「県内のNIE事情」をテーマに講義。メディアの特徴や効率的な利用法を解説したほか、各教科や主権者教育、震災・復興教育、家庭学習など教育現場における新聞活用の事例を紹介した。

 同月8日の「授業構想」では、記事を選び、分野、学年(中学)、単元名を設定した上で記事の利用法、目的をグループで考えた。

 学生が同日付の朝刊から選んだ記事は「日本軍毒ガス戦部隊の報告書確認」「国政選挙の投票率低迷」「参院選における税制議論」「年金問題」「世界遺産周辺の看板規制」「宮古のサッパ市」。地理、歴史、公民の教科書を開き単元を確認しながら利用法を考えた。

 それぞれのグループの発表に対する議論も活発に行われ、教材としての妥当性や課題を討論。上白石実教授は「記事はさまざまな観点で使える。問題点を生徒に投げかけることも大切だ」と助言した。

 学生は「NIEで多角的なアプローチが可能なことが分かった」「地元理解を深めるため、地方紙を使い教材研究をしたい」と意欲を高めた。伊藤和憲さんは「グループ討議で、見方、考え方の多様性を感じた。新聞を使う利点だと思う」とNIE効果を実感した。


大学生こそ新聞が必要

 新聞を活用した講義を行った盛岡大文学部の上白石実教授(55)に、大学生が新聞を読む必要性やNIEの意義について聞いた。

(聞き手 NIE・読者部 礒崎真澄)

「新学習指導要領が求める力の育成に新聞は最適」と語る上白石実教授

 -新聞を読む大学生が減っている。

 「親元を離れた途端、また、自宅通学でも大学受験を終えた途端に新聞から離れてしまう。しかし、大学生こそ新聞を読むことが必要。プレゼンテーションはできるが、議論になると腰が引ける学生が多い。裏付けとなる知識が不足し、自信を持てないことが背景にある。新聞には自分の関心があること以外の情報がたくさん載っている。多くの情報を目にすること、じっくり読み考えることで意見を持ち、しっかり話せるようになる」

 -教員志望学生にNIEの講座を設けた。

 「かつて教師の仕事は、知識・技能を教えることだったが、『知識を基に考える』『考えて結論を導き出す』『自分の言葉で伝える』という思考力・判断力・表現力が加わり、『主体的に学び、多様性を認め、話し合って仕事ができる』点が求められるようになった。これらの力を育むためにNIEは最適だ。新聞を『見る』ことで学びに向かう主体性、『読む』ことで知識・技能、思考力・判断力、『書く』ことで表現力が育成できる」

 -学生に新聞活用のアドバイスを。

 「切り抜きが一番だ。中学の社会科でいえば地理、歴史、公民のファイルを作り保存する。切り抜いた記事をコピーし余白に書き込みをすると使いやすくなる。例えば、地元の遺跡発見などは、中央の歴史との対比で使える。中学生に対しては、世の中で何が起きているかを知らせ、社会に関心を持たせることが大切。その動機付けに新聞はうってつけだ。日本のNIEの歴史は30年程度。新しい手法を若い人たちの手でつくっていってほしい」


素早く読みこなすコツ習得・吉岡楓さん

 新聞を読む習慣がなく、トレーニング初回は見出しではなく記事から読み始めてしまった。そのため時間が足りず思うように紙面全体を読み進めることができなかった。「見出しから読む」などコツを教わったことで、回数を重ねるごとにスピードが上がり興味のある記事にすぐ目がいくようになった。今回の講座は、とてもいい経験になった。

多様な考え方が見識深める・高橋歩実さん

 スマートフォンなどで情報を得ることが多く、新聞は高校受験のために時々読む程度だった。今回、毎週1回読んでみて、新聞は単に情報を載せているだけでなく、いろいろな見方、考え方も掲載していて自分の見識が深まるのを感じた。家庭でも興味を持って手にするようになり、新聞トレーニングの効果を実感している。

教員になり紙面活用したい・矢倉憧大さん

 これまで新聞はそれほど読んではいなかったが、今回の新聞トレーニングをきっかけに新聞の面白さを知り、個人的にも読む機会がすごく増えた。将来は教員を目指している。教科書に合った内容や地元の話題など、子どもたちに身近な記事を使ってみたい。授業の中で生徒たちが新聞に触れる機会を増やしていけたらいいと思う。

現在と過去知るNIE有効・田口幸奈さん

 中学時代、新聞から気になった記事を切り抜き、要約して意見や感想を1人ずつ発表していた。当時はNIEにつながると思わずに取り組んでいたが、今回の新聞トレーニングを通じて狙いが理解できた。新聞は現在の情報はもちろん、過去の出来事を振り返る手段としても有効と感じた。教員になったら、授業などで活用できそうだ。

新聞の教材的な価値を実感・青野希さん

 小学1年から新聞をよく読んでいる。低学年では地域・スポーツ欄、高学年から政治欄を読むようになった。新聞を読むことが読解力に結びつくと実感している。今は、ネットのニュースの真偽を新聞で確認している。今回、みんなで新聞を読み、視点の変化を感じた。新聞の教材としての価値は大きく、教師になったら教室で使いたい。

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