県内各地で真夏日が続く。朝から息苦しさを感じる暑さの中、体にまとわりつくような外気を逃れてエアコンが効いた室内へとたどり着くと、冷気に生き返った気分になる

▼物理学者の寺田寅彦は随筆に「涼しさ」とは瞬間の感覚で、持続すれば寒さに変わってしまうと記し「暑さとつめたさとが適当なる時間的空間的周期をもって交代する時に生ずる」と定義した(「涼味数題」)

▼温帯に位置する細長い島国である日本。背骨のようにそびえる山脈、両側に大海と海流が控えモンスーンが吹く。「俳句や歌に現われた『涼しさ』はやはり日本の特産物」であり、こうした自然条件から生じたと寺田は考えた

▼俳句は夏の季語が最も多いといわれる。「風鈴」「金魚売」「水中花」「釣忍(つりしのぶ)」など、涼しさを演出し暑さを乗り切ってきた暮らしの知恵が季語として残されている。これらは外国語に翻訳できても、そこにある日本的な感覚までは伝えられない

▼列島を襲う最近の猛暑はそうした日本独特の涼しさの文化を感じる余裕も奪う。「冷房」も季語になっているが、エアコンつけっぱなしの部屋では風流さを感じる機会も少ない

▼命をも奪いかねない熱中症から身を守るためには、冷房の活用や適度な水分の補給などが大切だが、昔からの風物を見直して、気持ちのうえでも涼しさを感じたい。