3年前の変わり果てた光景を思い出しながら、岩泉町内を巡る。復旧した道路、真新しい災害公営住宅、にぎわう龍泉洞。台風10号豪雨からの復興の確かな歩みを感じる。

 24人が犠牲になった同町で30日、町主催としては最後の慰霊式が行われた。3年の節目に際し、町は記録集「この体験を未来へ」を発刊。教訓を確実に次代につなぐことを、あらためて誓いたい。

 とりわけ痛恨事が、高齢者グループホーム「楽(ら)ん楽(ら)ん」の悲劇。豪雨で小本川が氾濫し、入所者9人全員が死亡した。遺族が運営法人に賠償を求めた訴訟は今月、3回目の命日を前に和解が成立した。

 法人側が利用者らを避難させる義務を怠り死亡させた法的責任を認め、あらゆる災害を念頭に置いた避難計画策定も和解内容に盛り込まれた。

 各地で豪雨災害が頻発する中、未曽有の事態はどこでも起こり得る。「他の自治体や福祉施設で教訓が生かされれば」。遺族の思いにこたえ、実効性ある避難訓練など備えに万全を期してほしい。

 「楽ん楽ん」の悲劇の背景には、町が出した「避難準備情報」に「高齢者らが避難を始める段階」という意味があるにもかかわらず、施設側が「準備の段階」と受け止めていたことがあった。国は教訓を踏まえ、「避難準備情報」の名称を「避難準備・高齢者等避難開始」に変更した。

 だがその後、西日本豪雨でも多くの住民が逃げ遅れたため、今年5月から「大雨・洪水警戒レベル」の運用も始まった。レベル1「災害への心構えを」から5「命を守る最善の行動を」まで、リスクの度合いを分かりやすく示す。

 本県では、市町村の迅速な避難判断に寄与するため風水害対策支援チームが発足。受け手側も感度を高める必要がある。近年はスマートフォンなどで災害情報を簡単に入手できるようになっており、積極的に活用し、主体的な避難行動につなげたい。

 ただ、高齢化が進む中、自力での避難が難しい住民が増えている。地域の共助力をどう培うか。全国的な課題だ。

 この3年、折に触れ、台風被災地を訪問。力を合わせて土砂の撤去に励んだり、近所のちょっと心配な人に野菜を届けて見守ったりと、住民ができる範囲で「お互いさま」を実践している様子を目にしてきた。「岩手の強みは、地域が残っていること」。東日本大震災被災地に駆け付けた全国の支援者の指摘は、台風被災地にも当てはまる。

 地域の助け合いを土台に、防災士の育成、自主防災組織の連携など、教訓を踏まえた取り組みを強めたい。平時から、岩手ならではの共助をどれだけ培っているかが、有事に問われる。