通称「顔ハメ看板」。ご当地の有名人などを描き、顔の部分をくりぬいた記念写真用看板。塩谷朋之著「顔ハメ看板ハマり道」を読んで以来、気になって、各地を訪れるたび探してしまう

▼塩谷さんが全国各地、2千枚超の看板を訪ね歩いて顔ハメ写真を撮った記録。平泉などの看板も登場する。へそ出し看板、多人数が顔を出せる看板など、バラエティー豊富。なんと28人用顔ハメ看板も登場する

▼なぜ、こんなに愛されるのか。旅の記念だけではあるまい。塩谷さんは、多人数用看板に知らない人が混じって全部の穴を埋めた時の達成感を踏まえ「素晴らしいコミュニケーションツール」と指摘。一理ある

▼顔がくりぬかれた女性を描いた表紙は、一見、顔ハメ看板。韓国で大ベストセラーになったチョ・ナムジュ著「82年生まれ、キム・ジヨン」の邦訳が日本でも話題になっている。キム・ジヨンは、1982年に出生した女の子の中で最も多い名前という

▼女性であるというだけで差別される主人公の物語。日韓の若い女性から「これは、まさに私の話です」などと共感が寄せられているという。表紙の絵は象徴的だ。顔のない主人公に、読者が自らを重ね合わせる

▼小説は絶望的。日韓関係も最悪。だが、共感は国境を越える。「顔と顔」のリアルな関係につなげたい。そこに希望がある。