勤務先に程近いカフェで昼食を取っていた。カウンター越しに突然「投票、行きましたか」と尋ねられる。みそ汁をすすりながらの思いもよらぬ質問に、間の抜けた顔をしたかもしれない

▼声のあるじは、厨房(ちゅうぼう)を1人で切り盛りする女性店主。こちらも、うなずく。すると「これ、選挙割です」と、デザートを付けてくれた。聞けば、投票率アップを願って3年前の参院選から始めたサービスという

▼味をしめたわけではないが、盛岡市長選と市議選の投開票翌日にも訪れてみた。ひとしきり客が引けた店内で、客同士が選挙のことをあれこれ話題にしている。もちろん話の輪に加わらなくても何ら支障がない

▼店主が言う。「政治や宗教、野球の話題は飲食店でタブー視されるが払拭(ふっしょく)したい。自分たちの未来のために投票に行かなくちゃ」と。静かに過ごしたい客には、お膳を出したら必要以上に話し掛けることもない

▼その中、ドアを開けて現れたのが、市議に初当選した一人だ。開票を見守り一晩眠っていないというが、リュック姿でひょっこり訪れた。コーヒーをすすりながら、しばし話を聞く。出馬の思いや、これからを

▼多くの市民の応援に「社会を変えていく切符を手に入れた。ここからがスタート」と前を向く。多様な生き方を望む声が広がっている。町に、新たな風が吹き始めた。