盛岡市長選で現職の谷藤裕明氏が5選を果たしたのは、政策の継続性や実績が支持を受けたからと言える。しかし、市政の停滞感を訴える声もある。新人の激しい攻勢を許した一因だろう。新たな任期では一層の覚悟を持って臨んでほしい。

 大きな懸案は中心市街地の行方だ。大規模小売店舗立地に関するこれまでの規制緩和の影響もあって郊外に商業ゾーンが拡大する一方、中心商店街が衰退している。

 購買が流出し、地場商店の廃業も相次ぐ。かつての商業ビルが取り壊され、駐車場に変わった場所が目に付く。アーケードの商店街と一体となっていた商業施設Nanak(ななっく)の閉店も大きな打撃だった。

 商業の根幹は民間経済にかかるが、都市の魅力を高める基盤整備や、ソフト事業の後押しなどは行政の力量が試される分野だ。

 その一つに交通網の構築がある。公共交通の重要性は各候補が訴えていた。

 公共交通の中できめ細かな生活の足としてはバスの比重が大きいが、バス事業者の経営は厳しい。利用や収入の増加のために行政と事業者は知恵を合わせ、斬新な政策が生まれるよう望みたい。利用促進には市民の理解と協力を促すことも欠かせない。

 市民が注視することに岩手医大付属病院の移転がある。本県の医療拠点の移転は医療面だけでなく、盛岡の街づくりや経済に及ぼす影響が相当に大きい。跡地利用や周辺一帯の振興について、市は積極的に役割を果たしたい。

 市内全体を見渡すと、地域によって人口の増減や少子高齢化の進展が異なる。人口減少が目立つ地域は都市機能をどう維持するかが課題になってくる。

 限られた財源で、老朽化も進む公共施設や生活基盤の維持を図らなければならない。維持費削減に向け建物系の長寿命化と複合化に取り組んでいるが、この成果を着実に挙げることが求められる。

 国内産業で観光の比重が高まる中、盛岡も資源を十分に生かしたい。歴史ある街でありながら「盛岡らしさ」が薄れてはいないだろうか。惜しまれつつ姿を消した建物もある。歴史や伝統ある暮らしの価値を生かした街づくりが魅力を生む。

 市政には市民の意欲的な参画が欠かせない。市長選と市議選は明日を考え、託す機会だった。投票率は前回をやや上回ったが、50%台前半にとどまったのは寂しい。

 市政に対する関心を高めたい。行政をより身近にする努力や工夫、市民目線を大事にした施策が求められよう。市民参画向上が、街の活気を高めるはずだ。