第24回NIE全国大会宇都宮大会は「深い対話を育むNIE」がスローガンだった。公開授業では記事を学習材に児童生徒が討論や話し合いで社会的課題に向き合い、実践発表では新聞で学ぶ工夫が紹介された。社会と教育を結び、学びを深める新聞活用法を本県教員が報告する。


記事の読み書き意欲的に(宇都宮大付属小4年)

岩手大付属小・関戸裕教諭

「言語活動のゴールとしての新聞記事の活用」をテーマに行った宇都宮大付属小の公開授業

 宇都宮大学教育学部付属小学校4年生の国語科授業を参観した。授業テーマは「言語活動のゴールとしての新聞記事の活用」であった。

 児童が文章を書く際に、相手意識と目的意識を強く持ち、主体的に活動できることを狙いとし、単元のゴールを「2年生の悩み事に答える新聞記事を書くこと」と設定していた。

 小学生新聞に掲載されている記事を教材文として提示。児童は、複数の新聞記事を読み比べて気付いたことを話し合う活動を通して、文章構成の巧みさに気付き、読み手を引きつける書き方について理解を深めていた。また、説得力のある文章にするために、書き手の経験や事例を挙げることの重要性についても気付くことができていた。

 児童の実態をふまえ、効果的に新聞を活用した実践であった。児童は、新聞を手掛かりとしながら文章のコツを見つけ、楽しそうに話し合っていた。

 文章を書くことに抵抗感がある児童や、自分の考えを相手に伝わるようにまとめることが苦手な児童が、自分の新聞記事を早く書きたいと意欲的に学ぶ姿が印象的であった。


ディベートに対話の視点(作新学院小学部6年)

奥中山小・加藤はるか教諭

食品ロスの新聞記事を題材に、飲食店での食べ残しの持ち帰りについて討論する作新学院小学部の児童

 作新学院小学部6年生の公開授業「『作新民』授業を展開しよう~ディベート&ダイアローグ(対話)で意見を発信しよう」を参観した。授業は、学校で目指す子どもの姿を達成するために、対話の視点を取り入れたディベートだった。

 題材は新聞記事から選んでおり、「食品ロス」の記事から考えを深め、「飲食店での食べ残しをドギーバッグ(持ち帰り用容器)で持ち帰るのは是か非か」という議題だった。

 教師が司会を務め、子どもたちは活発に意見を交わした。一般的なディベートと違うところは、勝敗にこだわるのではなく“折り合いをつける”ことを大切にし、そのために対話を取り入れる点だ。話し合う中で、相手の意見を尊重しつつ自分の意見との違いを認識し、相互理解を深めることができていた。

 また、ディベートの最後に勝敗を決めるのではなく“引っ越し”を取り入れ、相手の意見に納得した児童が席を移動する。これによって対話の成果を可視化することができていた。

 子どもが意見を言う時には、自分で調べたことや別の記事を根拠に話す場面もあり、普段から新聞を読む動機付けになると感じた。


社説を複数読み話し合い(宇都宮大付属中3年)

胆沢中・渡辺政江教諭

社説の読み比べから情報の扱い方に理解を深めた宇都宮大付属中の公開授業

 宇都宮大学教育学部付属中学校3年生の公開授業「対話的な学習活動を通して学びをつなげる国語科授業の創造-『情報の扱い方』に着目して」について紹介する。

 同校の中沢由香教諭は、国語科では新聞をどう教材として活用していくかを明確に示す授業を行った。

 最初に食品ロスの問題について複数紙の社説を、1人4分、4人グループで解説することから始まった。事前に事実・意見・予想を読み分けし、論の内容を詳細に理解させていた。

 次に全体で複数紙の社説の共通点・相違点をグループ内の対話によって考えさせた。共通点として「問題提起から論を進めている」「具体的な事例が挙げられている」、相違点については「具体例の大・小」と論の進め方が「尾括・双括」であることを気付かせた。

 最後に「新聞を読ませるために何をしているか」を考えさせた。その際、男子生徒の一人が会場の記者に聞くことを提案。「新聞を読ませるための工夫は」と質問し、記者が「今日の授業の皆さんのように、たくさん取材します」と答え会場が和んだ。社説を読み比べることで読み取りの力が普遍的なものとなる優れた授業であった。


各教科で多彩な取り組み(宇都宮大付属小)

柏台小・田村勝校長

 宇都宮大学教育学部付属小学校による実践発表「3つの資質・能力を育む新聞を活用した授業」に参加した。3つの資質・能力とは「学びをつなげる力」「かかわり合う力」「やり遂げようとする力」。新聞の特徴を生かした複数の教科の取り組みが発表された。

 国語(6年)は、新聞に掲載された昨年度の6年生の投書を生かしながら、書き方を学び、自分の伝えたいことを投書に書く実践。論理的思考力や情報活用能力の育成が図られていた。道徳(3年)では、新聞に掲載された大谷翔平選手らのエピソードを3年生用にリライトして朝の会で紹介。授業の中で教材文とともに「個性を輝かせるとは」について考える題材に活用し、子どもたちの関心を高めることができていた。

 図工(1年)は、造形活動の素材として新聞紙に親しむ学習。音楽(2年)は新聞紙を使って音づくりをする学習で、自己表現力の育成に活用されていた。

 協議の中で「図工と音楽はNIEと言えるのか」という話題が出たが、「低学年に新聞に親しませるという意味でよいのでは」との結論だった。多くの教科、多くのアイデアに触れ実りの多い実践発表であった。


NIE効果、分かりやすく(宇都宮市立五代小)

好摩小・菊池ゆか教諭

 宇都宮市立五代小学校の実践発表「新聞を活用した言語活動の工夫~思考力・判断力・表現力を育む活動」は、シンプルで大変分かりやすかった。

 新聞で世の中の出来事に興味・関心を持ち、それを題材に感想、意見を述べ合うことなどを通して、社会に目を向けながら物事を多面的・多角的に捉えたり、思考力・判断力・表現力を身に付ける活動だ。初めてのNIE体験だったが「やってみようかな」と思わせる内容であった。

 NIEに対する最大の疑問は「子どもたちに新聞でどのような力をどうやって付けるのか」という点。五代小学校の児童は、読みたい記事を探すことで自己決定力、多面的・多角的に捉える力、課題を見つける力を自然に身につけていた。記事に対し意見を持ち、記事を書いたり友達に伝えたりすることが自分の考えを持ち、表現する力につながっていた。

 「何のためにやるのか」という目的をはっきりさせて行うことで、NIEは子どもたちの思考力・判断力・表現力を育む有効な教材であると感じた。目まぐるしく情勢が変わる社会を生きる子どもたちに、生きた情報を届ける新聞は必要なものだ。


発達段階に応じ紙面活用(宇都宮市立豊郷中央小)

大沢小・佐藤はるみ教諭

 「主体的に学び合う児童の育成~子供たちが創るNIE」をテーマとした宇都宮市立豊郷中央小学校の実践発表は、確実に子どもたちに生きて使える力を付けていこうという内容だった。

 子どもたちがいかに新聞を知り、親しみ、活用していくか。発達段階に応じた取り組みが、全ての教育活動の中に巧みに仕組まれていた。その方法が実にユニークで、子ども自身も成長を自覚できるようなものだった。

 低学年は新聞の中のひらがな探し(国語科)、中学年は広告を利用した産地調べ(社会科)、高学年は天気図を毎日スクラップして天気予報(理科)など。ほかにもニュース委員会が情報発信の環境整備を主体的に行ったり、児童集会で「見出し連想クイズ大会」をしたりと、無理なく最も有効な形で新聞を活用しようとする活動がめじろ押し。新聞活用の可能性の広がりを示してくれた。

 バラエティーに富んだ活動の数々そのものも大きな成果ではあるが、特筆すべきは、子どもたちに新聞で得た情報について考え、語り合うことの日常化によって、着実な学力向上へと結びついていることだ。新聞活用の目的を明確に持つことの大切さを再認識した。