待機児童解消の目玉政策として導入された企業主導型保育所事業。全国的に参入が相次ぐが、定員割れや閉鎖、不正受給などの問題が顕在化している。人手不足を背景に、従業員の両立支援は企業にとって喫緊の課題。安定した運営体制の確保へ対策が急がれている。

 事業は、保育の受け皿拡大や多様な働き方への対応を目指して2016年度から始まった。企業が主に自社の従業員向けに保育サービスを提供。開設や運営基準が緩和されており、認可外保育所ではあるが認可並みに助成制度が手厚い。

 公益財団法人「児童育成協会」(東京)が審査や支給などの事業を運営している。助成決定は19年3月時点で全国3817施設、定員8万6千人分余り。県内ではこれまでに18施設が助成対象となっている。

 このうち岩手大と岩手銀行は共同で昨春、がんちゃんすくすく保育園(定員12人)を盛岡市内に開設。1、2歳児9人を受け入れ、来月からゼロ歳児2人が加わる予定だ。

 キャンパス内にある立地を生かし、大学の植物園や農場などが散歩コース。また、絵本の読み聞かせなどで訪れる学生と交流し、双方の成長につながる場にもなっている。

 入所希望に全て応えきれない状況もあるが、教職員や行員が身近に預けられる施設として心強い存在。市内で複数の保育施設を経営する社会福祉法人に運営を委託し、ノウハウを生かした質の高い保育サービスを心掛けている。

 ところが、大幅な定員割れなどから撤退の動きが各地で広がる。16~17年度に国の助成決定を受けた保育所のうち1割に当たる252施設で保育事業を取りやめていた。

 企業主導型では、定員の一部を地域枠として受け入れることも可能だ。しかし、認可施設を好む傾向は、保護者らに根強い。地域の保育需要に対する見通しの甘さなどもあって、利用児童が思うように集まらないケースが起きている。

 また、児童育成協会が昨年公表した全国800施設への立ち入り検査では、保育計画など、何らかの不備が7割以上の施設で見つかった。これでは、同協会が行う助成審査そのもののずさんさを問われても仕方があるまい。

 事業を所管する内閣府は有識者会議を設け、制度改善に向けた報告をまとめている。審査や指導監査の在り方の検証はもちろん、情報共有や指導を含めた自治体との連携強化は必至だ。

 子どもの安全と保護者の安心を第一に、安定した保育サービスの確保が強く望まれている。せっかく生み出した制度を、健全に育てたい。